カート追加ユーザー312%増。金精軒ECサイトが「見てもらえるが、買われない」状態から脱却した、”買いやすさ”改革の全貌

「一番愛している人に食べてほしいお菓子」。この実直なコンセプトを掲げ、山梨県で銘菓「信玄餅」を製造・販売する金精軒製菓株式会社様。その温かい想いとは裏腹に、ECサイトではブランドの世界観を伝えることを重視した結果、お客様が商品をスムーズに購入できない「買いにくさ」という壁に直面し、購入率の低下という深刻な課題を抱えていました。
本記事では、お客様の「買いやすさ」を最優先するECサイトへと舵を切ったことで、購入率、リピーター数の回復を達成し、お客様からの「買いにくい」という声をゼロにしたプロジェクトの全貌を明らかにします。同社の清水珠央様へのインタビューを通じて、ECサイトの本質的な価値と成功への道筋を探ります。

金精軒製菓株式会社
■所在地:〒408-0312 山梨県北杜市白州町台ヶ原2211
■オンラインショップ:
https://shop.kinseiken.co.jp/
金精軒様について
山梨県に拠点を構え、銘菓 「信玄餅」を最初に製造・販売した老舗の和菓子専門店。商標登録も保有する元祖であり、お菓子そのものの美味しさで顧客の信頼を得ています。「一番愛している人に食べてほしいお菓子」というコンセプトのもと、南アルプスの良質な天然地下水を使用し、素材の味を最大限に活かした正直な和菓子づくりを続けています。
得られた成果
- サイト全体の購買率が向上
- 訪問者の離脱が減少
- お客様からの「買いにくい」という声がゼロに
リニューアル前の課題
- 複雑なサイト構成による離脱増、機会損失
- 購買率とリピーターの継続的な微減
これからが行ったこと
- 「買いやすさ」を最優先事項としたリニューアル
- UI/UXの改善
課題:良かれと思った“こだわり”が、静かにお客様を遠ざけていた

金精軒様がECサイトのリニューアルを決断するに至った背景には、デザイン性の高いサイトの裏で静かに進行していた、深刻な課題がありました。
―ブランドイメージ追求が生んだ「迷子の森」
会社の理念や手作り感を伝えるため、コーポレートサイトと親和性の高いデザインをECにも採用。その結果、お客様はサイト内で商品を直感的に探せず、迷子になってしまう状態でした。「以前は、実店舗に来た気分になってもらおうとか、商品のことをたくさん伝えたいとか、こだわりを一生懸命伝えようとしていました。しかし、それが裏目に出てしまったのです 」
―データが示した静かな顧客離れ
清水様は「じわじわと購入率も下がり、リピーターの方も減ってきてしまいました 。リピーター率の低下が著しく、これはまずいぞということに、2年くらいで気が付きました」と語ります。データは、サイトの「買いにくさ」が顧客離れを招いている事実を明確に示していました。
―致命的なサイト内離脱と、新たな決断
決定的だったのは、Google Analyticsで判明した事実でした。「サイトを訪問したお客様の半数近くが、商品ページを見ることなく離脱していました 」。多大な費用をかけて作ったサイトの骨格を変えることには、もちろん葛藤がありました。「その骨格はあまり変えたくありませんでした。しかし、そもそも、その骨格自体に問題があると分かってしまったので、買いやすさに特化するには、もう作り変えるしかない、と 」。お客様に届いていないという事実を前に、新たな決断を下したのです。
施策:ECの“当たり前”を問い直す。課題解決と購買体験向上のための主要施策
深刻な課題を特定した金精軒様は、サイトの全面的なリニューアルを決断。そのパートナーとして弊社「これから」が実行した主要な施策は以下の通りです。
―ECサイトの役割の再定義
お客様に情報をたくさん読んでもらう「読み物」としてのサイトから、お客様の時間を奪わずに欲しいものがすぐ買える「買い物かご」としてのサイトへと、役割を再定義。「買いやすさ」を全ての施策の最優先事項としました。
―「購入率向上」への一点集中提案
「他社様はまんべんなく色々と『できます』という感じでしたが、御社は本当に購入率に着目されていました」。数ある指標の中から、金精軒様の課題の的を射た「購入率」の改善にフォーカスした、具体的かつ実践的な施策を提案。清水様は「それとECサイトの販売戦略とはかなり異なるのだな、ということをそこで感じました」と、ECの“当たり前”を問い直すきっかけになったと語ります。
―顧客ニーズに基づいた情報設計
お客様が最も求めている「生信玄餅」をはじめとした人気商品に、トップページから迷わずたどり着ける最短のアクセス動線を確保しました
―ストレスフリーなUI/UXの実現
カラーミーショップに特化した知見を活かし、お客様がストレスなくサイト内を回遊できるカテゴリー分類や検索機能を実装。快適な購買体験をデザインしました。

成果:金精軒製菓株式会社 清水様インタビュー
―まず、貴社の事業内容と、お菓子作りで大切にされていることを教えてください。
清水様:弊社は、山梨の銘菓である信玄餅を中心に、地元の素材を使った和菓子を製造している和菓子専門店です。「信玄餅」の商標登録も弊社が保有しております。あまり自分たちから積極的に(元祖だとは)言わないのですが、お客様の方からご評価いただいております。
私たちのコンセプトは「一番愛している人に食べてほしいお菓子」。安心安全はもちろん、素材の美味しさを活かすため、なるべく余計な手を加えないで作ることを大切にしています。また、私たちの工場がある白州町は水が大変豊かな土地で、南アルプスの天然地下水を水道から直接飲むことができます。この極めて軟水なお水が素材の味を引き立て、商品のおいしさに直結していると考えています。
―ECサイトリニューアルの具体的なきっかけと、当時の課題感を改めてお聞かせください。
一番のきっかけは、購入率とリピーター率がじわじわと下がってきたことでした。当時はECの知識が全くなく、会社の理念や手作り感を伝えるために、コーポレートサイトと親和性の高いデザインにしていました。しかし、自らGA4(Google Analytics)を勉強し、自分で分析してみたところ、サイト内でお客様が迷子になっているケースが多いことに気づいたのです。
カテゴリーも分かりにくく、「あれはどこだ?」「これはどこだ?」と、本当に買いやすくないサイトでした。特に、訪問者の半数近くが商品を見ずに離脱していると分かった時は、お客様に商品が届いていないという事実に、早急に作り変えなければならないと判断しました 。
―数ある制作会社の中で、弊社「これから」を選んでいただけた決め手は何だったのでしょうか?
御社の提案が、私たちの課題と完全に合致したからです。特に印象に残っているのが、購入率の上げ方について、かなり具体的に方針や施策をご提案いただけた点です。他社様はもう少し全体的なお話が多かったのですが、御社は「まず購入率を上げる」という一点に絞ってお話をしてくださり、それが弊社の課題とぴったり一致しました。
この時、「実店舗での体験とECサイトの販売戦略は全く違うのだ」と気づかされました。以前の私たちは、商品説明をたくさん読んで納得して買ってほしい、という考えでしたが、そうではなく「買いやすさ」が何よりも重要だということを、御社の説明で明確に理解できました 。
―リニューアルプロジェクトを進める上で、率直に感じたことや印象に残っていることはありますか?
はい、御社の専門性の高さと、私たちの要望に真摯に向き合ってくださる姿勢が非常に印象に残っています。
正直なところ、最初は専門的なお話に圧倒されることもありましたが、弊社の顧問が間に入ってくれることで、都度理解を深めながら進めることができました。むしろ、専門家の方々とチームを組んで一つのものを作り上げる、という頼もしさを感じていました。
また、表示速度については、私たちの「以前のサイトのデザインを踏襲したい」という要望を汲み取っていただいた上で、最適なバランス点を一緒に探っていただけたと感じています。 プロジェクトを通じて、デザイン性と速度はトレードオフの関係にあること、そしてその両立がいかに重要かを具体的に学べたのは、私たちにとって大きな収穫でした。
―様々なプロセスを経て、最終的な成果はいかがでしたか?
まず、お客様からの声が変わりました。以前は「買いにくい」というご意見をいただくことがありましたが、リニューアル後はその声が一切なくなりました。おそらくご満足いただけているのだと感じています。社内からも「可愛らしく、かつ買いやすいサイトになった」と好評です。
数値面でも、買いやすくなったという結果が如実に表れています。リニューアル前後の同期間で比較して、購入率は111%、注文件数は115%、注文商品数も119%に向上しました。課題だったリピーター数も114%まで回復しています。
特に、サイト内での行動改善は目覚ましいものがありました。GA4の分析では、サイトを訪問してからカートに商品を追加したユーザー数の伸び率が312%と、サイト内での体験が大きく改善されたことを確認できています。

展望:ECサイトは「第3の店舗」へ
―今後のECサイトの活用や事業の展望についてお聞かせください。
ECサイトの可能性は大いに感じており、目標はECサイトを「第3の店舗」に育てていくことです。実店舗とは役割が違い、ECサイトは新たな営業販路としての意味合いが強い。このポテンシャルを最大限活かしていきたいと考えています。
今回のプロジェクトを通じて、ECで売上を伸ばすためには、年間のスケジューリングや、事前にイベントの戦略を立てることの重要性を改めて痛感しました。これまでは安定供給の問題もあり難しかったのですが、今後はそうした計画的な運営にも挑戦していきたいです。
―最後に、弊社のサービスや今後のサポートに期待することがあればお聞かせください。
はい。実は、以前一度御社とご縁が途切れ、また改めてお願いした経緯があります。一度離れてみて初めて、以前のサポートが当たり前ではなかったのだと気づきました。もちろん担当の方にもよるのかもしれませんが、まるで自分の子供を見守るような手厚さがあると感じていました。
大きな費用をかけてお願いしているわけですから、そういった制作後の満足度が非常に重要です。その信頼があったからこそ、今回も御社を選んで間違いなかったと感じていますし、今後も同様のお付き合いを期待しています。
まとめ
ブランドの”想い”を伝えたいという強い気持ちと、お客様にとっての「買いやすさ」。多くのEC事業者が直面するこのジレンマに対し、金精軒様は「買いやすさこそが最高のおもてなしである」という答えを見出しました。データに基づき課題を直視し、ECサイトの本質的な役割へと立ち返る。その実直な取り組みが、購入率111%向上、そして「買いにくい」という顧客の声ゼロという、数字以上の価値ある成果へと繋がりました。
プロジェクトの過程では、専門的なコミュニケーションの難しさや、デザインと速度のトレードオフといった現実的な課題もありました。しかし、それらを一つ一つ乗り越え、最終的にお客様から「間違いなかった」という信頼の言葉をいただけたことこそ、私たちの何よりの誇りです。ECサイトは作って終わりではありません。弊社「これから」は、サイトの先にいるお客様の満足までを見据え、事業の成長を共に歩むパートナーとして、これからもクライアント様一社一社に寄り添ってまいります。
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