EC売上が前年比1.5倍に。顧客への想いが詰まった、さがえ屋のEC戦略

「お客様の為に、商品を創る喜び・売る喜びを感じ、お取引先様とともに私たちも幸せになる」
90年以上の歴史を持つ菓子メーカー、ぼんち株式会社が掲げる経営理念です。同社が山形県寒河江市で展開するブランド「煎餅工房さがえ屋(以下さがえ屋)」が生み出すお菓子には、作り手の実直な想いと、お客様への深い愛情が込められています。
その象徴が、看板商品「やみつきしみかりせん」。開発者である阿部様は、その誕生の背景をこう語ります。
「当時流行していた『ぬれせんべい』は、味が濃い点は評価されても、食感を評価する声は少なかった。そこで『味が濃くて染みていて、かつパリッとした食感』のおせんべいがあれば、もっと多くのお客様に喜んでいただけるのでは、という仮説から開発を始めました」。一枚で満足せず、次も食べたくなる「後引く美味しさ」を追求し、30回、40回と気の遠くなるような試作を重ねて生まれた逸品です。
これほどまでに情熱を注いだ商品を、一人でも多くのお客様へ最高の形でお届けしたい。その想いはECサイトでも変わりません。
しかし、ECサイトでその想いを実現するには、乗り越えるべきいくつかの課題がありました。
今回は、その背景にあった課題、そして解決への道のりについて、ぼんち株式会社さがえ屋事業本部の阿部様、田宮様にお話を伺いました。

煎餅工房さがえ屋/ぼんち株式会社
■所在地:〒991-0061 山形県 寒河江市 中央工業団地 16番地
■事業本部長:阿部 孝一郎
■オンラインショップ: https://www.sagaeya.co.jp/
煎餅工房さがえ屋様について
煎餅工房さがえ屋は、山形県寒河江市に本社を置く、せんべいやあられを製造・販売する企業です。1990年11月に「煎餅工房さがえ屋」として開店し、現在はぼんち株式会社の高級米菓部門として、国産米にこだわった高品質な製品を提供しています。実店舗のほか、オンラインショップでも販売を行っています。
得られた成果
- 売上が前期比で約1.5倍に
- 社内でのECの評価が上がり、EC販促の予算がおりやすくなった
- ノウハウやナレッジの蓄積
コンサルティング導入前の課題
- ナレッジ共有不足による属人化のリスク
- ノウハウ不足による販売機会の損失
- ブランディングとプロモーションの両立ができていない
株式会社これからが行った施策
- ブランドイメージを毀損しない、攻めの施策立案と実行
- 顧客視点でのコミュニケーション設計と運用
- EC運営においてのPDCA実行
課題:事業継続を脅かす「属人化」と、伝えきれないブランドの価値

―属人化のリスク
ECサイトの運営において、「さがえ屋」は複数の根深い課題を抱えていました。最も深刻だったのが、事業継続性を脅かす「属人化」のリスクです。経営的視点を持つ阿部様は、EC運用が特定の担当者に依存する体制に強い懸念を抱いていました。「ECサイトは日進月歩です。専門の担当者を置いても一人ですべてを追っていくのは難しい。ECの担当者が休職・退職した際に、社内にノウハウが全く残らないという事態は、何としても避けなければなりませんでした」と、阿部様は当時の課題について語ります。
―販売機会の損失
実際のEC運用現場も、同様に深刻な課題を抱えていました。社内にはECサイトの専門的な技術を持つスタッフがおらず、「時代の変化に追いつくので精一杯」という状況だったのです。このリソース不足は、お客様のニーズに応えきれていないというジレンマを生み出していました。例えば、母の日などのギフト需要期に合わせた特集を組むといった、本来であれば注力すべき施策にまで手が回らず、貴重な販売機会を逃していました。
―ブランディングとプロモーションの両立ができていない
さらに、お客様を想う“こだわり”が、意図せずして裏目に出ていました。ブランドの持つ「高級感」と、お客様にとっての「分かりやすさ」を両立させることは難しく、試行錯誤が続いていました。商品の魅力を伝えたい一心で、メルマガに多くのテキストを盛り込んでしまうこともその一つです。しかし、その熱意が逆に「読みにくさ」を生み、お客様に想いが届きづらくなっていたのです。良かれと思った行動が、かえってお客様との距離を生んでしまう。ECサイトは、知らず知らずのうちにそんな悪循環に陥りかけていたのです。

【図1:EC事業3つの課題】
施策:ブランドの世界観を守り抜く、「実行力」を伴ったパートナーシップ
株式会社これからがパートナーとして選ばれた背景には、サービスの提供範囲における他社との違いがありました。それは、分析や提案に留まらず、具体的な施策の実行までを担うという点です。阿部様は当時の状況をこう語ります。「他の業者さんは分析や提案はしても、実際の作業は自社で、というところが多かった。その点、『これから』さんは手を動かしていただけるという点が、弊社に最もマッチしていると感じました」。この点を踏まえ、これまで慣例的に行われていたECの運用方法について、具体的な改善に着手しました。
―ブランドイメージを毀損しない、攻めの施策立案と実行
「さがえ屋」が最も大切にするブランドイメージを深く理解し、その軸がぶれないことを絶対条件としました。その上で、機会損失となっていたギフト需要を狙い、「母の日特集」などの具体的な企画を提案。リソース不足で実現できなかった高品質な特集ページを制作・実行することで、新たな売上の柱を構築しました。

【図2:さがえ屋ECの母の日特集ページ】
―顧客視点でのコミュニケーション設計と運用
テキストが多く、読みづらくなってしまっていたメルマガについては、顧客視点での再設計を行いました。「テキストが少なくても魅力が伝わる構成」を具体的に提示し、実装することで、「読まれるメルマガ」へと転換。これにより、担当者様自身が「どうすればお客様に伝わるか」を再考するきっかけを生み出し、運用ノウハウの向上にも繋がりました。
―EC運営においてのPDCA実行
専門的な技術を持つスタッフが不在という課題に対し、施策立案からサイト更新、効果検証、改善といった日々のEC運営業務を『これから』で実施。これにより、PDCAを正しく実行することができました。お客様からのニーズに応えられる体制が整い、最短ルートで売上向上を目指せるようになりました。

【図3:パートナー連携によるPDCAサイクルの実行】
成果:EC売上1.5倍、そしてEC事業が会社の成長エンジンへ

実際の成果について、EC運営責任者の阿部様、田宮様にお話をお伺いいたしました。
―様々な施策の結果、売上にはどのような成果が表れましたか?
田宮様:これまで手が回らなかった部分に入っていただいたことで、さらに売上を伸ばすことができています。 3月決算だった2024年度は、ECサイトの売上が前期比で約1.5倍まで上がりました。ECサイトで効果のあった母の日のようなギフト需要へのアプローチを楽天の店舗にも応用することで、そちらの売上も伸びてきています。

―1.5倍は素晴らしいですね。売上以外のポジティブな変化はありましたか?
田宮様:社内の評価が大きく変わったことが、何より大きな成果です。EC事業が売上にも貢献してきたことで、部署内だけでなく、会社全体としてもその重要性が認識されるようになりました。先日、サイトのリニューアルという大きな投資判断がありました。その際社長より、これまでECで積み上げてきた成果と今後売り上げが伸びる市場だということ、また、リニューアル後に私たちがやりたいことを汲みとって実践いただけることを評価して、すぐに承認が下りました。
―当社との取り組みで印象に残っていることはありますか?
阿部様:コンサルティングを開始する前に、「一度土台を固めましょう」と『これから』さんから提案があり、ECサイトを刷新していただきました。その数ヶ月後にテレビ番組で取り上げられたんです。 これは私の推測ですが、テレビ局の方が番組として面白いかどうかを判断する際に、刷新されたECサイトが良い印象を与え、最終的にテレビ放映に繋がったのではないかと考えています。 あの時は注文が殺到しましたが、受注で手一杯な中、サイト改善を『これから』さんに担っていただけたのは非常に助かりましたね。 お客様の状況を見ながら改善提案をいただき、一緒にサイトを大きくしていくことができたと感じています。

―日々の当社との連携はいかがでしょうか。
田宮様:やはりメルマガの作り方ですね。私はつい思いを伝えたくてテキストを多く入れてしまうのですが、御社に作成を依頼した際、テキストが少なくても魅力が伝わる構成になっていて、「かえってその方が読みやすい」ということに気づかされました。改めて原点に立ち返り、どうすればお客様に伝わるかを考え直す、非常に良いきっかけになりました。

展望:ECを起点に、ブランド全体の価値を高める未来へ

―最後に、今後の事業展望と弊社へのご期待について、詳しくお聞かせください。
田宮様:現在は、EC限定商品の開発を進めています。また、定期便などの頒布会も強化していきたいと考えています。「やみつきしみかりせん」だけでなく、「さがえ屋」というブランド名でより多くのお客様に認知していただけるよう、広げていきたいです。それから、SNSからの流入を強化していきたいです。現在Instagramでリール動画なども作成しているのですが、キャンペーンなどを実施してもなかなか反響が得られないため、今後チャレンジしていきたい分野です。『これから』さんには本当に感謝しかなく、悪い印象は全くありません。引き続きよろしくお願いいたします。
阿部様:ECサイトに来てもらう「理由」を作り続けていくことが重要だと考えています。サイトをより魅力的にしていくためのご提案はもちろん、今以上に「さがえ屋」を世の中に広めていくための販促施策についても、今後ご協力いただきたいです。今はまだ広告宣伝費をほとんどかけていませんが、それはまずサイトの中身をしっかりと作り込みたいからです。その作り込みを一緒にやらせていただき、完成した後に、広めるための施策を共に実行していきたいと考えています。
―リアル店舗との連携については、どのようにお考えですか?
阿部様:はい、そこは非常に重要です。リアル店舗とECサイトの接点をより強化していきたい。ECサイトで買ってくださっているお客様が「店舗にも行ってみたい」と思えるような仕掛けを一緒に考えていきたいですね。商品を売るだけでなく、ブランド全体を売っていくお手伝いを期待しています。
まとめ

「担当者が一人しかおらず、日々の運用で手一杯」「専門知識がなく、新しい施策に踏み出せない」。さがえ屋様が抱えていたこれらの課題は、多くの企業にとって決して他人事ではありません。 今回の事例は、そうした課題に対し、「提案」だけでなく、具体的な施策の「実行」までを担うパートナーシップがいかに有効であるかを明確に示しています。ECサイトの売上1.5倍という成果はもちろん、EC事業の重要性が社内全体に浸透し、次の投資への意思決定がスムーズになったという組織的な変化こそ、この取り組みの大きな価値と言えるでしょう。 ECサイトは、もはや単なる販売チャネルではありません。ブランドの想いを伝え、顧客とつながり、時にはリアル店舗へと足を運ぶきっかけを作る、重要な拠点です。 ブランドの価値向上についてお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。
関連記事
-
2025/09/01(月)


