世界の越境EC市場規模ランキング|中国・日本・アメリカの現状と今後の予測

category :  EC売上UP

update :  2024/07/29(月)

staff :  nakahara

日本でECサイトを運営している事業者にとって、海外進出は新たなステップです。越境ECの市場規模は近年急速に拡大しているため、販路の開拓はさらなる利益につながるでしょう。ただし売上を増加させるには、まず越境ECの現状について理解する必要があります。

この記事では、越境ECの市場規模や動向について、今後の予測も含め解説しています。これから越境EC参入を検討している方はぜひ参考にしてみてください。

世界の越境EC市場規模ランキング

越境ECとは、ECサイトを利用して消費者が居住地以外の商品を購入することです。

越境ECの市場規模は年々拡大傾向にあります。 そのきっかけとなったのが2019年に発生した新型コロナウイルス感染症でした。外出自粛で需要が増え、小売分野でのEC化が一気に加速します。 

さらにコロナ禍で冷え込んだインバウンド消費を取り込むため、EC事業者は訪日できない外国人にも目を向けるようになりました。

コロナ禍を経た今も、EC小売市場規模は拡大し続けています。EC業界の事業者や企業にとって、越境ECの利用が今後ますます不可欠となるでしょう。

以下の表は2022年の国別EC市場規模のランキングです。

順位

シェア率

1位

中国

50.4%

2位

アメリカ

18.4%

3位

イギリス

4.5%

4位

日本

3.1%

5位

韓国

2.5%

6位

ドイツ

2.1%

7位

インド

1.7%

8位

フランス

1.7%

9位

カナダ

1.5%

10位

インドネシア

1.4%

出典:経済産業省|令和4年度 電子商取引に関する市場調査 報告書

表を見ると、、1位中国、2位アメリカ、3位イギリス、そして4位が日本です。1位の中国が50.4%と全体の過半数を占めています。 2位のアメリカと合わせた2ヵ国で世界シェアのおよそ7割に達するため、越境ECに参入するには中国とアメリカの2ヵ国へ向けた販売戦略が鍵となるでしょう。

越境ECの市場規模が伸び続ける理由

越境ECの市場規模は急速に拡大しており、今後も成長が続くと予測されます。経済産業省の「令和4年度電子商取引に関する市場調査」では、世界の越境EC市場規模は2021年時点で7,850億USドルと推計されるのに対し、2030年には7兆9,380億USドルにまで拡大する見込みです 。今後9年間の年平均成長率が約26.2%に昇ることからも、かなりのハイペースで市場規模が拡大していることがわかるでしょう。

ここでは越境ECの市場規模がなぜ伸び続けているのかについて、3つの理由を挙げて解説します。

  • 消費者の意識が変化している
  • 技術が進化している
  • 経済成長により越境ECを利用できる消費者が増えている

それぞれ順に説明します。

消費者の意識が変化している

越境ECの市場規模が拡大している理由の1つに、消費者意識の変化があります。

具体的には、以下の3点などが主な理由として挙げられるでしょう。

  • 手軽に海外製品を購入できる越境ECの存在が認知されてきた
  • 自国では買えない海外商品を求めている
  •  正規品を安全なサイトから購入したいと考えている

技術が進化している

めまぐるしく進化を続ける技術も、越境ECの市場規模拡大に貢献してきました。

ここでいう技術とは、以下のような越境ECを利用する際のユーザビリティ向上に大きく関わる機能のことです。

  • 翻訳ツール
  • AIによる商品レコメンデーションシステム

グローバル市場では英語に限らず、さまざまな言語への対応が欠かせません。近年翻訳ツールの精度が向上したことで、以前より簡単に多言語ウェブサイトの構築やカスタマーサポートの整備が可能になりました。

また、それぞれの嗜好に合った商品を分析・おすすめするレコメンデーションシステムも、「ほしい商品がすぐに見つかる」というユーザーの満足度獲得につながります。

さらに、決済方法や配送方法が多様化したことも見逃せないポイントです。

越境ECで主に用いられる決済方法 には、以下の4つなどが挙げられ、ターゲットとなる国や地域によって利便性が異なります。

  • クレジットカード
  • 第三者支払いサービス(AlipayやPayPalなど)
  • デビットカード
  • 代金引換

コストの面からも販売者にとって無理のない決済サービスを選択しなければなりません。決済方法の選択肢が増えたことで、越境ECへの参入が容易になりました。

コストや時間、安全性の確保など、考慮するべき多くのトピックがある配送方法に関しても同様のことがいえます。

経済成長により越境ECを利用できる消費者が増えている

近年、東南アジアやラテンアメリカなどの新興国において、越境ECの消費者が増加しています。その要因の1つが目覚ましい経済成長です。新興国では雇用や給与の面で中間所得層が厚くなり、個人消費支出が高まって購買力が著しく向上しました。 

また新興国においてスマートフォンが普及しインターネットの利用者数が伸びたことも、越境EC市場規模が拡大した理由として見過ごせません。モバイルから利用できる手軽さは魅力の1つです。さらに物流インフラも整備されつつあるため、今後も新興国における越境EC市場は拡大していくことでしょう。

EC化率については世界と日本のEC化率をご覧ください。

中国・アメリカ・日本のEC市場の動向

中国・アメリカ・日本のEC市場の動向

出典:経済産業省「令和4年度 電子商取引に関する市場調査 報告書」

日本・アメリカ・中国の3ヵ国間の越境EC市場規模は、上記の図表の通りです。他の2ヵ国に対して輸出額が輸入額を大きく上回っているのが日本の特徴で、「日本の商品に幅広いニーズがある」ことを示しています。

具体的な数字を見てみると、日本が中国とアメリカを経由した購入総額は約3,953億円であるのに対し、輸出総額は約3兆5,625億円です。もともと需要のあるブランド品や美容関連の商品に加えて、近年はアニメのキャラクターグッズなど、サブカルチャー関連の商品が人気となっています。

さらに、歴史的な円安が越境EC市場に与える影響は多大です。 日本製品を割安で購入できることが海外ユーザーの購買意欲を刺激し、輸出額の伸びにつながっています。

中国

2022年の国別ランキングでも1位であったように、中国のEC市場規模は世界全体の半数以上を占めます。また日本市場からの購入額が格段に多いため、海外マーケットを狙う日本の事業者にとって、中国向け越境ECはビジネスチャンスに溢れているといえるでしょう。

ここからは、以下について解説します。

  • 中国の越境ECがどのように推移していくのか
  • 中国の越境ECで用いられるプラットフォーム

EC市場規模の推移と予測

変化率に年々差はあるものの中国のEC市場は拡大傾向にあり、2026 年には EC 市場規模が 3 兆 9,850 億 US ドルに達すると想定されています。これは前年比7.0%の増加で、今後も堅調に推移するとの見方が一般的です。

人気のECプラットフォーム

中国のEC市場では、以下の3社が台頭しています。

  • アリババグループ(Alibaba)
  • 京東(com)
  • 拼多多(pinduoduo.com)

中でも2015年に設立された「拼多多」は、低所得者層をターゲットに、共同購入で安価に商品を手に入れられるシステムを導入しました。

この3社で全体の7~8割のシェアを独占しているため、日本の事業者が中国越境ECに参入する際は、独自のサイトを構築するよりも各社の日本製品専用モールに出店する方が懸命です。

アメリカ

アメリカのEC市場規模は世界第2位のシェアを誇り、全体のおよそ18.4%です。越境ECを経由したアメリカからの日本製品購入額は1兆3,056億円で、中国からの購入額9,055億円を大きく上回ります。日本製品に対する幅広いニーズの現れといえるでしょう。

ここからは、以下について解説します。

  • アメリカの越境EC市場規模が今後どのように推移していくか
  • アメリカの越境ECで用いられるプラットフォーム

EC市場規模の推移と予測

世界全体のEC市場と同様、アメリカのEC市場も拡大し続けており、2024 年から2029年にかけてプラス51.25%の成長が見込まれます。 ピークの2029年には金額にすると1 兆 1,453 億 US ドルに達すると想定され、今後も着実な成長を続けるでしょう。

人気のECプラットフォーム

アメリカのEC市場で人気のプラットフォームは、以下の通りです。

  • Amazon
  • Walmart
  • Apple
  • eBay

2023年のアメリカEC市場シェア第1位の企業は日本人にもお馴染みのAmazonで、全体の15.6%を占めています。米Amazonが発表した2023年度EC売上高は前期比10.5%増の4,121億ドルであり、前年からおよそ400億ドルプラスとなりました。 

マーケットプレイスに出品するサードパーティ事業者を含めるとアメリカEC市場はAmazon一強ですが、小売業界全体ではWalmartがトップシェアを占めます。また、掲載商品数が圧倒的で全世界190ヵ国に展開するeBayも越境EC市場では見過ごせない存在です。

ここで紹介したAmazonやWalmart、eBayは海外からでも比較的簡単に商品を出品できるため、日本からアメリカEC市場に新規参入するハードルは低いといえます。

日本

現在の日本の越境EC規模は世界シェアの4位に位置しており、全体に占める割合は3.1%です。対中国や対アメリカとの取引額は、日本商品を購入する海外消費者が多いという特徴を示しています。

日本の越境EC市場規模も、一層の拡大が予測されている点は他国と変わりません。以下の4つがその主な理由です。

  • 日本商品の品質に対する信頼性が高い
  • アニメ関連グッズなど、日本オリジナルの商品に人気がある
  • 歴史的な円安である
  • インバウンド増加に伴い、訪日外国人のリピート購入が増える

ただし潜在的に参入意欲はあっても、越境ECに取り組んでいる日本人事業者はまだまだ少ないのが現状です。言語や物流、決済手段など、障壁となっているトピックを1つずつ解消していくツールやシステムの利用が鍵となるでしょう。

今後の世界の越境EC市場規模予測

世界の越境 EC 市場規模は、今後も拡大の一途をたどる見込みです。2021年から2030年にいたるまでの間に世界の越境EC市場規模は毎年約 26.2%ずつ成長していくと予想され、これは10年間でおよそ10倍成長することを示しています。

また現在マーケットを牽引している中国やアメリカに加え、アジアを中心とした新興国での越境EC市場にも注目すべきでしょう。インターネット利用者人口の増加や物流インフラの整備が、さらなる越境EC市場規模の拡大につながると期待されます。

まとめ

今回は世界の越境EC市場規模や動向について、今後の予測も含め解説しました。

自国にない商品や高品質で信頼性の高い商品を、安価かつ手軽に購入できる点が越境ECの魅力です。少子高齢化を受け、今後ますます縮小の方向へと向かう日本市場とは対照的に、越境ECは可能性にあふれています。新たなステップとして海外に目を向け越境ECに参入すれば、さらなるビジネスチャンスを獲得できるでしょう。

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