営業許可のいらない食品まとめ|東京都の食品販売に関する営業許可や届出について解説
「営業許可のいらない食品ってありますか?」
一言で言うと「常温保存ができて、長期間保存しても食品衛生上危害が発生する恐れがない食品を販売する」場合は営業許可の申請や営業届出を出す必要はありません。具体的には、カップ麺や包装されたスナック菓子等が該当します。ここで注意したいのが、販売なら営業許可や営業届出の提出が不要であることです。つまり、製造する場合は許可や届出が必要になるケースがあります。今回は、東京都の食品販売に関する届出や条例について解説していきます。
営業許可制度は3パターンあります
食品衛生法による営業の許可制度は以下3パターンあります。
- 「営業許可と営業届出の両方が不要」な食品
- 「営業許可のみ必要」な食品
- 「営業届出のみ必要」な食品
営業許可の取得と営業届出の提出が不要な食品は①が該当します。 すなわち、管轄の保健所へ何か申請や届出を出す必要がなく自由に営業できるということです。 本書の読者は、①「営業許可と営業届出の両方が不要」な食品を知りたいと思いますが、②や③も知っておくことで、より制度への理解が深まると思うので、それぞれ解説していきます。
営業許可のいらない食品とは
営業許可(届出)のいらない業種は以下の通りです。
- 食品又は添加物の輸入業
- 食品又は添加物の貯蔵又は運搬のみをする営業(ただし、冷凍又は冷蔵倉庫業は届出が必要な業種)
- 常温で長期間保存しても腐敗、変敗その他品質の劣化による食品衛生上の危害の発生の恐れがない包装食品又は添加物の販売業(カップ麺や包装されたスナック菓子等)
- 合成樹脂以外の器具・容器包装の製造業
- 器具・容器包装の輸入又は販売業 このほか、学校・病院等の営業以外の給食施設のうち1回の提供食数が20食程度未満の施設や、農家・漁業者が行う採取の一部と見なせる行為(出荷前の調製等)についても、営業届出は不要です。
1-5の内、食品販売に最も関係があるのは、 「3,常温で長期間保存しても腐敗、変敗その他品質の劣化による食品衛生上の危害の発生の恐れがない包装食品又は添加物の販売業(カップ麺や包装されたスナック菓子等)」 です。つまり、「常温保存ができて、長期間保存しても食品衛生上危害が発生する恐れがない食品を販売する」場合は営業許可(届出)が不要です。具体的には、
- カップ麺
- スナック菓子
- 缶詰
- ジャム、、、等
が該当します。ここで、注意したいのは「販売業」というキーワードです。他社の製品を仕入れて販売するのに営業許可(届出)は不要ですが、製造する場合は許可が必要になる場合があります。もし、商品を製造して販売したい場合は、一度管轄の保健所に確認を取りましょう。その他、「5,農家・漁業者が行う採取の一部と見なせる行為(出荷前の調製等)についても、営業届出は不要です。」については、農家・漁業者が自ら生産したものを、
- 食品加工業者に直接販売※1
- 流通業者を通じた委託販売※2
- 未加工で直売(庭先、直売所(有人・無人)、通信販売など)※3
する場合も、営業許可(届出)は不要です。
※1,2,3 引用:農業及び水産業における食品の採取業の範囲について
※当社2023年10月実績
営業許可の必要な食品とは
食品衛生法の営業許可が必要な業種は以下の通りです。
【調理業】 |
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【販売業】 |
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【処理業】 |
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【製造業】 |
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平成30年に食品衛生法が改正され、営業許可業種が見直されました。 16,18,26,28-31までの業種は、改正にともない新しく追加されました。上記の制度は令和3年(2021年)6月1日からスタートしています。
※当社2023年10月実績
営業許可を取得するために必要な事
営業許可を取得するためには取得するべき資格や満たすべき基準があります。
- 保健所が定める施設要件を満たす
- HACCPに沿った衛生管理を行う
- 食品衛生責任者の設置をする
それぞれ解説いたします。
保健所が定める施設基準を満たすこと
営業許可の対象となっている業種を営む方は、管轄の保健所長から許可を得る必要があります。営業許可を得るには、施設基準も満たす必要もあります。以下が施設基準です。
第1 各営業に共通する基準(※一部抜粋) |
|
第2 営業ごとの特定基準(※一部抜粋) |
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第3 生食用食肉の加工又は調理をする施設、ふぐを処理する施設の基準(※一部抜粋) |
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営業許可を取得するにあたって、上記の施設要件を満たす必要があるので、しっかり確認しておきましょう。
HACCPに沿った衛生管理
HACCPに沿った衛生管理とは、食品事業者が使用する原材料や製造方法などに応じ、計画を作成して管理を行う衛生管理のことを言います。営業許可と営業届出をするには、HACCPに沿った衛生管理を行う必要があります。具体的には、以下を行う必要があります。
- 「一般的な衛生管理」及び「HACCPに沿った衛生管理」に関する基準に基づき衛生管理計画を作成し、従業員に周知徹底を図る
- 必要に応じて、清掃・洗浄・消毒や食品の取扱い等について具体的な方法を定めた手順書を作成する
- 衛生管理の実施状況を記録し、保存する
- 衛生管理計画及び手順書の効果を定期的に(及び工程に変更が生じた際等に)検証し(振り返り)、必要に応じて内容を見直す
引用:厚生労働省
一般的な衛生管理に関する基準は以下の通りです。
- 食品衛生責任者等の選任:食品衛生責任者の指定、食品衛生責任者の責務等に関すること
- 施設の衛生管理:施設の清掃、消毒、清潔保持等に関すること
- 設備等の衛生管理:機械器具の洗浄・消毒・整備・清潔保持等に関すること
- 使用水等の管理:水道水又は飲用に適する水の使用、飲用に適する水を使用する場合の年1回以上の水質検査、貯水槽の清掃、殺菌装置・浄水装置の整備等に関すること
- ねずみ及び昆虫対策:年2回以上のねずみ・昆虫の駆除作業、又は、定期的な生息調査等に基づく防除措置に関すること
- 廃棄物及び排水の取扱い:廃棄物の保管・廃棄、廃棄物・排水の処理等に関すること
- 食品又は添加物を取り扱う者の衛生管理:従事者の健康状態の把握、従事者が下痢・腹痛等の症状を示した場合の判断(病院の受診、食品を取り扱う作業の中止)、従事者の服装・手洗い等に関すること
- 検食の実施:弁当、仕出し屋等の大量調理施設における検食の実施に関すること
- 情報の提供:製品に関する消費者への情報提供、健康被害又は健康被害につながるおそれが否定できない情報の保健所等への提供等に関すること
- 回収・廃棄:製品回収の必要が生じた際の責任体制、消費者への注意喚起、回収の実施方法、保健所等への報告、回収製品の取扱い等に関すること
- 運搬:車両・コンテナ等の清掃・消毒、運搬中の温度・湿度・時間の管理等に関すること
- 販売:適切な仕入れ量、販売中の製品の温度管理に関すること
- 教育訓練:従事者の教育訓練、教育訓練の効果の検証等に関すること
- その他:仕入元・販売先等の記録の作成・保存、製品の自主検査の記録の保存に関すること
引用:厚生労働省
HACCPに沿った衛生管理の基準は以下の通りです。
- 危害要因の分析:食品又は添加物の製造、加工、調理、運搬、貯蔵又は販売の工程ごとに、食品衛生上の危害を発生させ得る要因(危害要因)の一覧表を作成し、これら危害要因を管理するための措置(管理措置)を定めること。
- 重要管理点の決定:1.で特定された危害要因の発生の防止、排除又は許容できる水準にまで低減するために管理措置を講ずることが不可欠な工程を重要管理点として特定すること。
- 管理基準の設定:個々の重要管理点において、危害要因の発生の防止、排除又は許容できる水準にまで低減するための基準(管理基準)を設定すること。
- モニタリング方法の設定:重要管理点の管理の実施状況について、連続的又は相当な頻度の確認(モニタリング)をするための方法を設定すること。
- 改善措置の設定:個々の重要管理点において、モニタリングの結果、管理基準を逸脱したことが判明した場合の改善措置を設定すること。
- 検証方法の設定:1.~5.に規定する措置の内容の効果を、定期的に検証するための手順を定めること。
- 記録の作成:営業の規模や業態に応じて、 1.~6.に規定する措置の内容に関する書面とその実施の記録を作成すること。
- 小規模営業者等への弾力的運用:※小規模な営業者等は、業界団体が作成し、厚生労働省で確認した手引書に基づいて対応することが可能
引用:厚生労働省
営業許可や営業届出をするには、上記基準は満たしておきましょう。
食品衛生責任者の設置
食品衛生責任者とは、食品衛生責任者養成講習を受講した者で、食品衛生責任者として専任されている者です。食品の衛生管理が必要な事業を行う際に必要な資格です。食品衛生責任者の資格を取得するためには、計6時間程度の養成講習会を受講する必要があります。講習会の受講は一般社団法人東京都食品衛生協会ホームページをご覧ください。なお、次の資格を持っている方は講習会を受けなくても食品衛生責任者になることが可能です。
- 調理師
- 製菓衛生士
- 栄養士
- 船舶料理士
- と畜場法に規定する衛生管理責任者
- と畜場法に規定する作業衛生責任者
- 食鳥処理衛生管理者
- 食品衛生管理者又は食品衛生監視員の資格要件を満たす者
上記の条件を満たした上で、以下の流れで営業許可を申請しましょう。
- 保健所へ連絡(相談)
- 営業許可申請を提出
- 施設検査を受ける
- 営業許可証を交付してもらう
- 営業スタート
保健所は自分の管轄の保健所へ連絡しましょう。
※当社2023年10月実績
営業届出の提出が求められる対象
食品衛生法の営業許可が必要な業種と届出が不要な業種以外は、営業が届出の対象になります。以下は営業届出の対象です。(一部抜粋)
製造・加工業の例 |
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調理業の例 |
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販売業の例 |
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営業届出は営業許可とは異なり、施設基準の要件はありませんが、営業許可と同様に「食品衛生責任者」を設置し、「HACCPに沿った衛生管理」を行う必要があります。
営業許可の申請や営業届出を出さないと罰則される
営業許可の取得や営業届出を出さないと食品衛生法の第55条と風営法49条1号に反するため、罰則があります。以下に罰則をまとめました。
営業許可を取得せずに営業した場合 |
営業届出出さずに営業した場合 |
営業許可を更新しなかった場合 |
2年以下の懲役または200万円以下の罰金刑 |
罰則により50万円以下の罰金刑 |
1年以下の懲役または100万円以下の罰金刑 |
自分の販売する食品が営業許可または営業届出が必要な場合は、必ず事前に対応しましょう。
よくある質問
営業許可の罰則は?
食品衛生法、風営法に反し2年以下の懲役または200万円以下の罰金が課せられます。
営業許可証の掲示義務は?
施設内の見やすい場所に掲示する義務があります。
食品衛生責任者 何人必要?
営業許可が下りた施設ひとつにつき、1人です。
食品衛生責任者の掲示義務は?
営業許可や営業届出の対象となる全ての施設で見やすい場所に刑事する義務があります。
食品衛生責任者ないとどうなる?
- 営業許可の取り消しや営業の全部もしくは一部禁止、期間を定めての停止
- 食品衛生法により、最大で2年以下の懲役または200万円以下の罰金
いずれかの罰則に処される可能性があります。
※当社2023年10月実績
まとめ
今回は営業許可のいらない食品について具体的な食品名と条例について解説していきました。 営業許可や営業届出の提出対象なのにもかかわらず、提出しない場合は罰則を受ける可能性があります。罰則を受けないためにも自分の取り扱う食品が営業許可または営業届出が必要になるのかどうかをしっかり事前に確認しておきましょう。
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