D2Cマーケティングのメリット・デメリット|成功させるためのポイントを解説
D2Cマーケティングとは、インターネットの普及により可能になった新しい販売方式で、近年、話題を集めています。
資金力が少ない中小企業、個人事業者でも始めることができるD2Cのメリット・デメリット、成功するポイントなどを紹介します。
企業の成功事例も取り上げています。D2Cを始めたい経営者、D2Cで本格的に起業したい方など、ぜひ参考にしてください。
D2Cマーケディングとは
D2Cとは、「Direct to Consumer」の略語で、企業などが企画立案して製造した商品を自社ECサイトで消費者に直接販売するもので、DtoCと表されることもあります。
D2Cは2000年代後半に登場したビジネス手法ですが、近年、急成長している背景には、スマホの普及とアドテクノロジー(インターネット広告技術)の進化があります。
総務省の令和4年版「情報通信白書」によると、2021年の情報通信機器の世帯保有率は、モバイル端末で97.3%となり、20代~40代では99%近くがスマートフォン(以下、スマホ)を持っています。
スマホの普及に伴い、SNSを通じて企業と消費者が直接つながり、アドテクノロジーの進化で、ターゲットとなる顧客層を絞り込み、最適な広告を表示させることが可能になったことから、D2Cに取り組む企業が急増しています。
従来のECサイトとの違い
D2Cマーケティングを積極的に実施している業種として、アパレルメーカーとコスメブランドがあります。従来のECサイトとの違いを見る前に、D2Cの要件を確認しておくと、以下の3つの要件を満たす必要があります。
- 自らが企画立案して製造した商品であること
- 自社ECサイトを構築していること
- 消費者に直接販売すること
楽天市場やアマゾンなどのECモールは、消費者に直接販売する点で共通していますが、大きなショッピングモールに出店するため、自社サイトを独自に作る必要はありません。さらにECモールでは仕入れた商品を販売するお店もあることから、D2Cとは異なっています。
BtoB・BtoCとの違い
D2Cによく似たビジネスマーケティング用語としてBtoBとBtoCがあります。
- BtoB(B2B):「Business to Business」の略語で、企業同士が取り引きをすること
- BtoC(B2C):「Business to Consumer」で企業と消費者が取り引きをすること
BtoBやBtoCは取引の対象が誰なのかを示す用語で、対象以外の意味にはこだわっていません。それに対し、D2Cは販売形態を表しています。
D2Cは確かに企業が消費者と直接取引するのでB2Cに該当しますが、BtoBとBtoCでは、誰がどんなふうに販売するのかといった販売形態について触れていません。
※2023年3月28日時点 当社実績
D2Cマーケティングを行うメリット
自社ECサイトを簡単に構築できるシステムが普及し、D2Cが簡単に行える環境が整ってきています。D2Cマーケティングを行うメリットとして、以下の3つがあります。
【D2Cマーケティングを行うメリット】
- 顧客のニーズを反映しやすい
- 顧客のロイヤリティを向上させやすい
- ブランディングがしやすい
顧客のニーズを反映しやすいため、商品の改良などを重ねることで、満足できる商品を提供できるようになります。商品のブランディングがしやすいことから、ファンを集めやすくなり、顧客のロイヤリティの向上にも役立ちます。
顧客のニーズを反映しやすい
1つ目のメリットとして、商品に顧客のニーズを反映しやすい点が挙げられます。D2Cのビジネスモデルでは、自社商品の企画立案から製造・販売まで一貫して行います。仲介業者がいないため、商品開発に顧客のニーズを反映しやすく、改良を重ねることで満足度の高い商品を提供できるのが魅力です。
独自のキャンペーンなどを自由に行うことができるなど、顧客のニーズに応じて迅速に対応できるのもメリットです。
顧客のロイヤリティを向上させやすい
顧客のニーズを反映された商品づくりを行い、改良を重ねることで、顧客満足度が高まり、顧客ロイヤリティを向上させやすいのが2つ目のメリットです。
商品に込められた想いをストーリーにして顧客に伝えることで、顧客は商品をより身近なものと感じるようになり、普通の回手から「ファン」へと変化していきます。顧客ロイヤリティとは、顧客が商品に対して感じる「信頼」や「愛着」をいい、顧客ロイヤリティが向上すると、リピート率が高まり、顧客単価が高くなります。
D2Cでは、商品の機能面だけでなく、商品の世界観や顧客のニーズに合ったライフスタイルを提案することで、顧客ロイヤリティが向上するとされています。
ブランディングがしやすい
D2Cの3つ目のメリットとして、自社ECサイトやSNSを活用して、消費者に対してダイレクトに世界観やコンセプトを伝えるブランディングがしやすい点が挙げられます。
ECモールと比べると、自社ECサイトはマーケティングの自由度が高く、独自の活動を行なえます。また、実店舗だと自社の世界観やコンセプトはお店に来てもらわないと分からないのですが、ネットショップだと、より簡単に伝えることが可能です。
D2Cマーケティングを行うデメリット
D2Cマーケティングにはデメリットもあります。デメリットやリスクも確認しておきます。
【D2Cマーケティングを行うデメリット】
- 新規顧客の獲得にはあまり効果がない
- 運営コストがかかる
新規顧客の獲得にはあまり効果がない
大手ECモールには集客力があり、多くの人が集まってきます。さらにECモール自体の知名度の高さから購入しやすい環境が作られているため、新規顧客の獲得は比較的行いやすいとされています。
一方で、自社ECサイトを構築しただけでは、新規顧客は集まりません。お店と商品を知ってもらうために、さまざまなマーケティング手法を行い、SNS集客のスキルを身に付けるなど、時間をかけて集客する必要があります。
自社ECサイトで事業を始める前に、新規顧客をどう獲得するかなど、集客方法まで考えておく必要があります。
運営コストがかかる
D2Cでは、新たに自社ECサイトを構築する必要があり、初期費用がかかります。ターゲット層に自社ブランドを認知してもらうために、有料広告など、さまざまなマーケティングを行う必要があるだけでなく、ECサイトの運営にコストがかかるため、今まで以上にコストが発生することも考えられます。
運営コストはかかるが、D2Cはマーケティングの自由度も高く、仲介業者への手数料、ECモールへの費用なども不要で、努力次第で売り上げを伸ばすことも可能です。
D2Cマーケティングを成功させるコツ
D2Cを成功させるコツは以下の4つです。
【D2Cを成功させるコツ】
- ターゲットのペルソナまでしっかり考える
- 独自のブランディングを確立する
- ユーザーとしっかりコミュニケーションをとる
- SNSを活用する
商品のターゲットを絞り込み、ペルソナまで考えた後は、商品のブランディングを確立します。共感してもらえるようなストーリーやコンセプト作りには時間をかけて取り組むのがポイントです。最も大切なのはユーザーとのコミュニケーションで、SNSなどを活用しながら声をしっかりと聞きます。
ターゲットのペルソナまでしっかり考える
自社商品のターゲットとなる顧客を設定するのがD2Cを成功させる1つ目のポイントです。年齢や性別、職業、居住エリアだけでなく、さらに踏み込んで個人の趣味や価値観、好みなど、ペルソナまでしっかり考えることが大切で、自社商品を利用してもらいたい人物像を想像します。
ターゲットとなる顧客を絞り込み、どんな人に商品を購入してもらいたいかを考えることで、より「刺さりやすい」戦略を考えることができます。
独自のブランディングを確立する
D2Cマーケティングのターゲットとなる消費者は、ミレニアム世代やZ世代です。20~30代の消費者は商品を購入するときに、ブランドの世界観や価値観に目を向けています。独自のブランディングを確立することがD2C成功のカギとなります。
D2Cでは自社ECサイトで商品を販売するため、ECモールの知名度を活用できません。そのため、SNSやブログなどでブランドの世界観やストーリーを定期的に発信することが大切になってきます。世界観を伝えるフレーズを多用する、SNSと自社ECサイト、実店舗で世界観を統一するなどといった工夫を凝らして、ミレニアム世代やZ世代の共感を集めましょう。
ユーザーとしっかりコミュニケーションをとる
D2Cで成功している企業はユーザーとしっかりコミュニケーションを取っています。商品開発や店舗運営などにも、ユーザーの声を積極的に取り入れているのが特徴で、商品レビューで批判的なコメントを書いたユーザーに対しても、感謝の言葉を述べ、対応策だけでなく、自社ブランドのコンセプトなどを伝えています。
InstagramやTwitter上で「どちらのパッケージが買いたくなるか」といったアンケートを行う、人気商品ランキングの投票をお願いする、社長自らライブ配信に登場し、新商品に関してユーザーと意見交換するなど、ユーザーと積極的につながりましょう。
SNSを活用する
D2Cマーケティングでは、SNSの活用は欠かせません。SNSは自社商品の情報を発信するだけでなく、ユーザーと積極的にコミュニケーションを行う道具として活用しているのも特徴的です。さらに、SNSはユーザーとの距離が近く、活用することで、ブランド認知がされやすくなり、ファン獲得にもつながります。
マーケティング支援会社の株式会社ネオマーケティングが2021年に実施した調査によると、ファンになったブランドを知ったきっかけとして、1位のテレビCMに続き、2位にSNSが入りました。
大企業も積極的にSNSを活用し始めており、SNS担当の広報スタッフが「〇〇会社の××さん」としてキャラクター化しているところもあります。
※当社2022年8月実績
D2Cマーケティングの成功事例
D2Cマーケティングの成功事例を3社紹介します。カスタマイズシャンプーのメデュラ、老舗の皮革製品ブランドの土屋鞄製造所、完全栄養のパンを販売するBase Foodは顧客の声を聞き、迅速に対応することで顧客満足度を高めて成功したお店です。
MEDULLA(メデュラ)
国内初のカスタマイズシャンプーを販売する「MEDULLA(メデュラ)」。自社ECサイト内にある9つの質問に答えてもらうことでユーザーの髪質を診断した後、3万通りの候補の中から、1人ひとりの髪質に最も適したシャンプーとトリートメントを製造し、自宅に届けてくれます。
メインターゲットは自分に合うヘアケア用品を見つけられずに困っている20代∼30代女性の「シャンプー難民」です。パーソナライズの商品なので、注文のたびに処方を変えることも可能で、人気インフルエンサーやタレントとのコラボ商品も人気です。
消費者とのコミュニケーションを大切に、商品開発やコンセプト作りに活かしています。
土屋鞄製造所
土屋鞄製造所は1965年にランドセルからスタートした老舗の皮革製品ブランドです。自社で製造した高品質なバッグや財布、文具などを取り扱っており、2000年初めから自社ECサイトを立ち上げ、ブランディングを強化してきました。
時間をかけて優しくなじむ、相棒のようなレザーアイテムを作ることをブランドコンセプトにしています。製品に対する想いを読むと、選びぬかれた素材を使い、職人が丁寧に革製品を作り上げている姿が頭に浮かびます。シンプルなデザインは、時を超えて長く愛用してもらいたいからで、ブランディングがしっかり確立されているのが特徴です。
販売促進グッズからECサイト・SNS運用まで内製化を進めたことで、商品やお店のブランディングに集中できるようになり、顧客層を大幅に増やすことに成功しました。
Base Food
ベースフード株式会社は、1食のみで必要な栄養素を摂取できる機能性パンや麺などを販売している会社です。「主食をイノベーションし、健康をあたりまえに」をミッションとして、自社ECサイトを中心に販売しています。
べ―スフードのECサイトはランディングページのようなデザインになっているのが特徴で、食品の栄養素、人体に与えるメリット、美味しく食べる方法などのページがスムーズな導線でつながり、ユーザーの購買行動を促進しています。
開発ストーリーは漫画仕立てで、代表の橋本舜さんは、IT企業に勤務していた時に不健康な食生活を送っていたことから、主食ですべての栄養素が取れる商品を開発しようと起業したことが紹介されており、読みやすく共感できます。
まとめ
D2Cは、企業などが企画立案して製造した商品を自社ECサイトで消費者に直接販売するもので、スマホの普及とSNS、アドテクノロジーの進化が急成長の背景にあります。
自社ECサイトを構築し、運営するのにコストはかかりますが、自由度が高く、ターゲット層を絞り込むことで、最適なマーケティングを行なえます。メリットとデメリットを踏まえ、成功事例を参考にしながら、D2Cマーケティングを戦略の一つに加えてみてはいかがでしょう。
※当社2022年4月実績
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