ECサイトとは|意味・種類とサイト例を一覧で解説

ECサイト定義から、種類・役割・運営について、ECビジネスとして知るべき概要を例も取り上げながら解説します。
右肩上がりで成長を続けるEC市場において、ECサイトを今後のビジネスに活かすためには、ECサイトとは何かを正しく理解する必要があります。
本記事は、ECの現場を踏まえた実践的な内容から、EC市場の現状・見通しまでを盛り込んでいます。
現状のECサイトの概要を知りたい方は参考にしてください。
なお、ECサイトとは一般的に物販ECを指しますので、BtoCに寄せた内容となっています。
ECサイトの定義や読み方
ECサイトとは、インターネットを利用して、受発注が行われるサイトです。ECの意味は「Electronic Commerce」を略した言葉で、頭文字を抜粋しています。
一言でいうと、ネット経由で物品やサービスを販売、購入できるサイトのことです。
ECの読み方は「イーシー」、日本語に訳すと『電子商取引』で、ECサイトはネットショップ、オンラインショップとも呼ばれます。
広義の意味では、インターネット上で電子商取引ができるサイトを指します。
例えば、ネットのオークションサイト、音楽や映画などのコンテンツ配信サイト、株式売買のサイトなども含まれます。
しかし実際は、ECサイトとはショッピングができる物販のサイトを指します。
ECサイトの例
そもそもECの定義はネット経由で受発注が行われること
EC の定義は「インターネットを利用して、受発注がコンピュータネットワークシステム上で行われること」*です。
もともとは、OECD(経済協力開発機構)が2009年にEC の定義を提示しています。
なお、一般的には「物販EC」を指すことが多いです。物販のサイトがECサイトの主流だからです。
※出典:2021年7月の電子商取引に関する市場調査 経済産業省
ネットショップやオンラインショップも同じ意味
ECサイトと、ネットショップ・オンラインショップ・ネット通販も同じ意味です。
それぞれの言葉は、ビジネス側(運営者)かユーザー(消費者)かの立場によって呼び方が異なることが多いです。
- ・運営者:ECサイト
- ・消費者:ネットショップ、オンラインショップ・ネット通販
用語の使い方にルールはありませんが、企業が消費者へ宣伝する際にには、ネットショップ・オンラインショップを使うことが多いです。
ECサイトの業態は3種類ある
広義のECサイトでは業態は3種類ありますが、狭義ではBtoCのみです。
- ・BtoB
- ・BtoC
- ・CtoC
それぞれの特徴を紹介します。
(1) BtoB(Business to Business)
企業同士が取引をすることです。
例えば、企業がオフィスのデスクなどをメーカーから購入する、製造に必要な部品を購入することです。
2020年の市場規模は334兆円で、最も市場規模が大きい業態です。
ただし、市場規模が大きい理由として、ネット上で物品を購入する以外の取引も含まれていることです。
請求・納品手続きを企業の専用回線によって行うEDI取引(企業間電子取引)も金額に含まれるため、市場規模が大きくなっているのです。
(2)BtoC(Business to Consumer)
企業と一般消費者が取引をすることです。洋服や食品を購入するなど物販が中心です。
さらにBtoCのECサイトは2種類のビジネスモデルあります。
- ・総合通販:様々なジャンルの商品を販売する。
- ・単品通販:同じ指向性をもつ商品やジャンルに絞って販売する。
一般的には総合通販型のサイトが多いです。
最近はDtoC(Direct-to-Consumer)と呼ばれるメーカーが卸売業者を通さずに一般消費者へ販売する業態も注目されています。
代表的な商品では化粧品、衣類などです。
大きな分類ではBtoCに含まれる業態で元々は単品通販と呼ばれていましたが、2019年前後からDtoCと言い換える企業が増えました。
2020年の物販ECの市場規模は12兆2333億円で、過去5年間の成長率は6.4%です。今後も継続的に伸びることが見込まれます。
(3)CtoC(Consumer to Consumer)
個人同士の売買取引のことです。例えば、「Yahoo!」などのオークションサイトや「メルカリ」などのフリマアプリで販売・購入することです。
法人が関わる領域は基本的には売買のプラットフォームの運営する企業のみですが、法人がアカウントを作成してオークションサイトに出品するケースもあります。
市場規模は1兆9,586億円で直近5年間で約3倍伸びており、これからも伸びていくと予想されます。
ECサイトの市場規模は引き続き成長中
ECサイトが注目される主な背景には、ECの市場が伸び続けていることです。
ECサイトを取り巻く環境は、規模や成長度合いだけを見る限り、ビジネスのチャンスが大きいと言えます。
2018 | 2019 | 2020 |
直近3か年 |
|
BtoB(企業と企業) | 344兆2,300億円 | 352兆9,620億円 | 334兆9,106億円 | 1.8% |
BtoC(物販) | 9兆2,992億円 | 10兆515億円 | 12兆2,333億円 | 6.1% |
CtoC | 1兆5,891億円 | 1兆7,407億円 | 1兆9,586億円 | 37.0% |
ECサイトが最も多く存在する物販ECの市場は、2010年から2020年まで毎年3%以上の成長し続けています。
ネット環境やスマートフォンの普及、生活の多様化などの伴って急成長を続ける市場は、今後も伸び続けることは間違いありません。
野村総合研究所でも、BtoC 市場は2026年度に29兆4000億円(非物販含む)まで成長すると予測しています。
このようにECサイトは、EC市場の成長を支える要因となっています。
※参考:2021年7月 経済産業省「電子商取引に関する市場調査」
※参考:野村総合研究所(NRI)「ITナビゲーター2021年版」
ECサイトの主な目的は売上の拡大
ECサイトを運営する目的は事業者によって異なりますが、数多くの事業者の目的は売上の拡大のためです。
そのためにECサイトには以下の役割を担います。
- ・新たな販路開拓(国内・海外)
- ・ECサイトと実店舗の間で相互集客
- ・顧客サービスの一環として利便性の提供や顧客との関係の強化
ECサイトの基本的な役割は、ネット上の「店舗」です。本質的には実店舗と同じく、商品・サービスの売買です。
2つの違いは手段が異なるだけです。例えば、来店・決済・商品を品定めする方法などです。
そのためECサイトがネット上の店舗と言えども、サービスの根本的な考え方は実店舗と大差はありません。
しかし、近年はユーザーがECサイトと実店舗ともに利用することを促進させる取り組んでいる企業もあります。
複数のチャネル(販売窓口・接点)を統合的に管理して、それぞれの接点で商品を買えるようにして、利便性や顧客満足度を高めていく仕組みです。オムニチャネルとも言います。
例えば、ECの売上が年々伸びている無印良品のお買い物アプリでは、ポイント機能を活用して、実店舗へ来店するたびに、ポイントと交換できるマイルがもらえます。
オムニチャネルの戦略を強化しているABCマートでは、ECサイトで商品や価格を確認、店舗での試着を予約して来店を促しています。さらに、ECサイトで購入した商品を店舗で受け取れるサービスもあります。
このように、ECサイトも商品を購入できる機能を提供するだけではなく、集客や顧客満足度の向上などの役割を担うことが増えつつあります。
ECサイトの種類は2種類
ECサイトの種類は、自社ECサイトとモール型ECサイトの2種あります。
Amazonや楽天などがモール型、メーカーや小売業者などの企業が独自で運営しているサイトが自社ECサイトです。
種類 | 概要 | 長所 | 短所 |
自社ECサイト | ドメインやサーバを契約してECサイトを構築。 通常、ECサイトとは自社のECサイトを指す。 |
デザインや機能性に富む | 集客力 |
モール型ECサイト | 同じドメイン、サイト内で様々なショップが 出店しているネット上の商店街。 例えばAmazon、楽天など。一般的には モールと呼ぶ。 |
集客力 |
デザインや |
自社ECサイト型の長所は、自社のブランドを訴求しやすいことです。
サイトの制限が多いモールと異なり、自社でECサイトを構築するため、デザインや機能面では比較的、融通が利きやすいです。
Amazon・楽天のような大手モールの場合、知名度が圧倒的に高いため集客力が強いです。
自社ECは、自分たちで集客方法の検討をする必要がありますが、モールの場合は実績のある集客方法から選ぶことが可能です。
ECサイトの構築と必要な機能
ECサイトの構築の手間は、年々と敷居が下がっています。
昨今は、初期費用が無料で、知識がなくてもECサイトを開始することもできるサービスが増えているからです。
ECサイトを開始すること自体は、個人・法人問わず2週間程度の短期間でも可能です。
運営に必要な基本的な機能もASP等を活用することで、満たすことが可能です。
構築する方法は4通り
モール、自社ECサイトの構築する方法は以下の通りです。
サイト種類 | 方法 | 概要 |
---|---|---|
モール | モール | Amazon・楽天などのモールで構築。 |
自社ECサイト | ASP* | ECサイトの機能が整ったリーズナブルなシステム。 |
オープンソース | 自由度が高い独自のサイトの構築が可能。 | |
パッケージ | 機能が充実した独自のサイトの構築が可能。 | |
フルスクラッチ | 独自性があり大規模なECサイトを構築。 |
※ASPとはアプリケーション・サービス・プロバイダの略。ネット上でアプリケーションを提供するサービスの提供者
モールで構築する場合、ドメインやサーバの手配は不要です。
自社ECサイトの場合、構築事例として最も多いのがASPです。理由はECサイトに必要な機能、商品やサービスに合わせたデザインのテンプレートを用意しており、比較的簡単に、安価でサイトを構築できるからです。
フルスクラッチは、ZOZOTOWNやユニクロのような、大手のECサイトが採用している方法です。
開発費用や保守費用が最も高い方法ですが、独自性のあるECサイトの構築が可能です。
ECサイトに必要な機能
ECサイトを滞りなく運営するために必要な機能を紹介します。
ECサイトとしての要件を満たす機能は、受注管理と決済機能のみですが、通常は以下の機能がだいたい備わっています。
機能 | 概要 |
商品登録 | サイトで販売する商品情報を登録・更新する機能。 |
在庫管理 | 販売可能な商品の数量を管理する。 |
受注管理 | 注文された商品や金額・数量・日付などを管理する。 |
決済 | 注文時にクレジットカードや代引きなど各種の決済と連携する。 |
顧客管理 | 注文や会員登録を行った顧客の情報を管理する。 |
出荷管理 | 商品を配送するためのデータ処理をする。 |
デザイン・ページ作成 (CMS) |
サイトのページ・デザインを作成・更新をする。 |
販促 | ポイント、メルマガ送信など販促するための機能。 |
分析 | 売れ筋商品、顧客の属性、アクセス数などサイト全体のデータを分析。 |
ECシステムによって操作性に違いはありますが、機能面において大きな優劣はありません。
Amazonや楽天などのモールの場合も、運営に必要な機能が全て備わっています。
自社ECサイトの場合も同様で、ASPやパッケージを利用すれば必要な機能がほぼ備わっていることがほとんどです。
そのため、特殊なECサイトを立ち上げることを除いて、機能面で困ることはあまりないでしょう。
ECサイトの運営業務
ECサイトの運営に必要な業務内容を大きく分類すると以下です。
- ・サイトの更新・制作
- ・受注・発送処理
- ・顧客対応
- ・販促
運営にあたり、最低限必要な業務はサイトの更新、受注・発送処理、顧客対応です。
ECサイト運営に必要な業務をさらに分類すると以下です。
業務 | 作業内容 |
商品登録・撮影 | 商品をECサイトに登録、掲載。 |
サイト更新 |
セール、新商品の販売などの情報更新のためにサイトを更新。 |
受注管理 | 日々の受注が滞りなく処理されているか管理。 |
発送・在庫管理 | 発送に必要な資材や商品の在庫状況を定期的に確認。 |
顧客対応 | 顧客からのメールやLINE、電話の対応。 |
プロモーション | 集客の施策を検討、実施する。 |
CRM(顧客管理) |
既存顧客へのメルマガ、LINE、DMなどの企画、配信。 |
重要指標の数値管理 | アクセス数・購入率などのサイトや顧客動向の数値の管理。 |
商品登録や受注・在庫管理などに専門的な技術は不要で、システムに備わっている機能を使うことで基本的に誰でも可能です。
サイト更新も、サイトの仕様次第では難しくはありません。
ECサイトの運営方針や規模にもよりますが、業務によって外注・内製に分けることが多いです。
特にプロモーションの主な施策となる広告や、倉庫を活用した商品の在庫管理は外部へ委託することがほとんどです。
顧客対応も外部へ委託することもあります。
さらに、商品だけを提供して運営自体を外部へ委託する取り組みもあります。
運営ができる人材を確保が簡単ではなくなっている中で、利益率が下がっても専門の会社へ委託したほうが効率的と判断しているためです。
運営における課題として、売上を伸ばすためのノウハウを蓄積しにくい体制になりがちです。
業務量や人員の都合から、日々の作業に追われてしまい、新たな取り組みが後回しになることが多いためです。
対策として、分業体制やEC専門の会社の活用も重要です。
成果に必要なこと
売上を成果とした場合、まず取り組むべき課題は訪問者数を増やすことです。数多くのECサイトが抱える課題でもあります。
ECサイトの売上は下記3つの指標をそれぞれ掛け算して算出できます。
- ・訪問者数(ユーザー)
- ・CVR(成約率)
- ・客単価
サイトの訪問者がいないことには、サイトの売り上げはもちろん、サイトの改善点(成約率)も見えてきません。
集客数を伸ばすための施策として最も有効なのが、広告です。
集客方法を広告に限る必要はありませんが、サイトの運営方針に合わせて、集客施策をしっかり検討する必要があります。
商材別のECサイトの事例一覧
ECサイトの事例として比較的多いジャンルごとに事例を紹介します。
モールから自社ECサイトへの販路拡大、BtoBからBtoCへの販路拡大などECサイトの活用して売上を伸ばしています。
食品
衣類
イタリア発のブランド。国内では著名人が着用していることで話題になりファンが増加。ECサイトでも反響が大きくなっています。
雑貨
まとめ
ECサイトの要件を満たす機能から考えると、シンプルな定義で難しいものではありません。なんの略かも答えは簡単です。
EC サイトの構築から運営も、システムが日々進化していることで個人でも可能となりました。
それ故に EC サイトの数は年々増える一方です。
それを裏付けるように、BtoC市場におけるEC化が年々進んでおり、2020年はEC化率が8%*となりました。
2022年度は10%まで市場が伸びている可能性もあり、モノ・サービスの売買が実店舗からECサイトへますますシフトしていく傾向です。
今後ますます注目されていくECサイトを、自社のビジネスにどう活かしていくかは、実店舗を営む企業であっても検討する必要性に迫られています。
BtoCにおけるECサイトの競争は激化しており、売上を伸ばすためには、自社の強みや競合分析を踏まえた戦略が重要です。
EC サイトをいかに構築し運営していくかも重要ですが、どのような戦略・戦術でECサイトを運営していくかをあらかじめ踏まえた上で、然るべき方法を選択することが大事です。
また、ECサイトの運営における課題として、社内にノウハウを持つ人材がいない、効率的な集客方法がわからないなども含めて、専門会社に相談することをおすすめいたします。
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