ECサイトと実店舗のメリット・デメリット|ECとリアルの違いを解説
個人事業主や小・中規模の事業者が、物販の商売を始める際に、実店舗とEC サイトのどちらが売上が伸び利益が出るのか、判断が必要です。
今後の市場動向やメリット・デメリットを比較すると、EC サイトが優勢です。
しかし、EC サイトにもデメリットがあります。
メリット・デメリットを比較して、自分の商売や志向性がどちらに向いているのか、判断材料にしてください。
実店舗とネットショップの市場規模推移
どの業種においても、国内のEC市場は成長を続けています。今後もその流れは変わりはありません。
アパレルの市場では、実店舗で商品を買っている割合は減少傾向と言えます。
販売チャネル別にみると、百貨店・量販店が減少傾向です。
特に大手百貨店の閉店が続いており、業界大手の三越伊勢丹ホールディングスも店舗の閉店が続いています。
大手アパレルのオンワードも、国内外で全体の約2割に相当する600店舗も閉店する方針です。
百貨店・量販店は減少していますが、その他(通販・EC)が伸び続けています。
ECが伸び続けている事例として顕著なのが、アパレルECで代表的なZOZOTOWNを運営するZOZOです。
2016年の売上は544億円、2021年は1,474億円まで成長しました。
小売店の売り上げが減少し EC の売上が伸びる現象は、多くの業種で見られる動向です。
※当社2023年10月実績
アパレルECの市場規模とEC化率
EC の市場がどれだけ伸びているのか、個人から小・中規模の事業者が参入することが多いアパレル市場で解説します。
アパレル市場では年々 EC 化率が進んでいます。
2015年から2020年まで市場規模は約1.6倍、EC化率は2倍以上伸びています。
ECサイトと実店舗の違いを比較
EC サイトと実店舗の違いを比較します。
EC | 実店舗 | |
---|---|---|
市場 | 全体的に成長傾向 | 一部市場を除き衰退傾向 |
来店動機 | 目的の商品を検索していて、お店にたどり着く | 通りすがりに店舗の外観や雰囲気が気になり入店 |
営業時間 | 24時間いつでも購入可能 | 営業時間に来店可能なお客様に限られる |
開店費用 | ECサイト構築費用 | 店舗の契約・開店費用 |
運営費 | 出店から維持管理まで低コストでの運営が可能 | 店舗投資の初期費用から賃料までコストが高い |
利益率 | 実店舗より高い | ECより低い |
人員 | 1人から可能。 | 営業時は店舗に必ず常駐 |
商品陳列数 | 制限が少ない | 店舗の面積に依存する |
業務内容 |
・サイト更新 |
・商品陳列 ・店舗の整理整頓 ・売上管理 ・接客 ・在庫確認 |
集客方法 | SEO・ネット広告・SNS | チラシやDM、ブログやSNSなどで近隣住民を中心に集客 |
接客方法 | メール、SNSなどでメッセージ中心 | 店舗で対面の直接コミュニケーション |
決済方法 | 現金以外の決済が中心 | 現金とその他の決済 |
配送 | 送料がかかってくる | 基本的に不要 |
出店から運営までの費用、利益率はEC サイトが有利です。EC サイトは基本的に実店舗よりも固定費が安いからです。
その他の大きな違いとしては、EC サイトはインターネット上の店舗なので、販売人員・時間・店舗面積などの制限が実店舗と比べて少ないです。
以下で、個別で補足します。
販売時間
ECサイト | 実店舗 |
・原則24時間販売 | ・お客様が来店しやすい時間帯を設定 |
営業時間を決めずに販売できるのがECサイトの利点です。忙しいお客様が、隙間時間や深夜、早朝など好きなタイミングでECサイトを訪れ、購入をします。
実店舗はお客様が来やすい時間帯を中心に営業時間を設定し、営業時間内は常に店内に経営者もしくは従業員がいて、接客を行います。
開店費用
ECサイト | 実店舗 |
・無料ASPは初期費用 ・有料ASPは3,000円~ |
・物件の取得費用は数百万円 |
ECサイトの開設費用は、最低限の機能だけのサイトなら無料で可能です。デザイン制作などの業務を制作会社へ依頼すると50万円以上かかることが多いです。
なお、最近では初心者でも簡単にECサイトをサービスが複数あります。
店舗の開業資金には、物件の契約だけで数百万円、内装やディスプレイの費用などを加えると1,000万円を超えるでしょう。
利益率
ECサイト | 実店舗 |
・固定費が抑えられるので高め |
・固定費が高いので低め |
利益率は EC サイトが優れていることが多いです。理由は実店舗より固定費が抑えられるからです。
固定費で負担が大きいのは店舗の賃貸料と関連する経費です。EC サイトの場合はこれらが抑えることが可能です。
商品の陳列数
ECサイト | 実店舗 |
制限が少ない | 制限が多い |
ECサイトで商品の掲載数に制限が少ないのは、商品情報の多寡は商品情報のデータ量に依存するからです。
ECサイトはサーバーで構築し、全ての情報はサーバーで管理されるため、掲載できる点数はサーバーの容量次第で決まります。
基本的には数百点以上の掲載が可能です。さらに拡張も可能です。
実店舗の場合は、面積に依存します。そのため商品の陳列数を増やすためには、面積を拡大しないといけないため、ECサイトと比べたら費用や手間が大きくかかります。
集客方法
ECサイト | 実店舗 |
・広告の運用 ・SNSの運用 ・SEO |
・SNSの運用 ・屋外広告(OOH広告) |
ECサイトへ集客するには様々な施策を行うことが必要です。SEO・WEB広告・SNSなどの集客方法です。
店舗の場合、屋外広告や折込チラシの配布などの集客方法です。また ECサイトと同様にSNSを活用します。
業務内容
ECサイト | 実店舗 |
・ECサイトの更新・分析 ・梱包・出荷 |
・店舗の運営業務全般 |
EC サイトは実店舗と比べて作業内容が多く発生しますが、EC サイトの運営には特別な技術や知識は不要です。最近のEC サイト運用サービスが、初心者でも運用しやすいように作られているからです。
その他に商品の梱包・出荷作業あります。注文数が多くなれば人を雇うか、外注する必要があります。
決済方法
ECサイト | 実店舗 |
・クレジットカード決済が中心 | ・現金支払いが中心 ・クレジットカードも増えている |
EC サイトの決済方法は、クレジットカード・キャリア決済・コンビニ決済・銀行振込など様々です。
EC サイトの場合は、クレジットカード決済の利用者が多いです。そのため、現金支払いが多い実店舗と比べて、入金サイクルが遅くなりキャッシュフローが異なってきます。
※当社2023年10月実績
ECサイトのメリット・デメリット
ECサイトのメリット・デメリットを解説します。
メリット | デメリット |
・開業資金が少ない ・店舗を探す必要がない ・商圏が日本全国、海外まで広がる ・24時間販売できる ・同時に多数の注文を受け付けることができる ・固定費が安い ・データが蓄積できるので顧客管理がしやすい |
・ファン化しにくい ・集客が簡単ではない ・価格競争に巻き込まれやすい ・サービスや技術のアップデートが早い |
EC サイトのメリットは開業の資金が少なく、リスクが少ないことです。EC サイトの構築も決して難しくはありません。
そのため誰でもEC サイトで開業することができます。または個人で副業として始めることも可能です。
撤退する際も、初期投資や固定費が安いので判断しやすいです。
デメリットは、競合が多いため集客にコストがかかります。さらに、実店舗と比べればファン化が難しいです。
お客様と直接対面できないため、顧客ニーズがつかみにくく、商品の価値を知ってもらうためには、文章や画像など手段に限るからです。
集客対策や商品やサービスの価値を理解してもらうために SNS の活用も必須と言えます。
実店舗のメリット・デメリット
実店舗のメリット・デメリットを解説します。
メリット | デメリット |
・ファン化しやすい ・お客様の人物像や様子・反応をその場で観察できる ・通行人が来店してくれる ・現金販売が中心だとキャッシュフローが安定しやすい ・商品を試してもらうことができる |
・開業資金・固定費が高い ・商圏が限られる ・営業時間が限られる ・店舗面積が売上に直結しやすい ・店舗には誰かが常駐している必要がある |
実店舗のメリットはお客様と直接対面ができ、試食や試着などを通じたコミュニケーションによって、商品の価値を訴求できます。
お客様とのコミュニケーションを通じて得ることができる、生の声も店舗の改善に生かすことができます。
デメリットは、EC サイトと比べて多額な費用です。
開業資金以外にも、毎月の固定費として、賃貸料や光熱費などの様々な経費が発生します。
さらに、実店舗の売り上げは立地条件にも左右されるため、投資できる資金の大小によって、売上が変わってきます。
ECサイトと実店舗の連携も重要
大手のアパレル・雑貨・ファッション関係の企業では、ECサイトと実店舗が連携が進んでいます。
新たなサービスを通じた利便性を提供し、顧客満足度を高めることで、競合優位性が作れるからです。
例えば以下のような取り組みが始まっています。
- ・店舗にない商品を EC サイトで購入できる仕組み
- ・ECサイトで購入した商品を店頭で受け取る
- ・来店した際にポイントやクーポンがもらえるショッピングアプリの提供
お客様が店舗や EC サイトとの垣根を超えて、あらゆる販売チャネルで購入できる仕組みをオムニチャネルと呼びます。
オムニチャネルの導入には、店舗・ECサイトSNSなど、様々な販売チャネルから商品を購入できる仕組みを整えることが必要です。
リスクを抑えて開業するには、EC サイト・SNSから構築し、その後の売り上げ次第で、実店舗を検討するのが良いでしょう。
まとめ
EC サイトは実店舗よりリスクを抑えて開業することができます。投資資金をできるだけ少なく手間を抑えて開業するなら、 EC サイトがおすすめです。
国内の市場動向もますますEC化率が進み、実店舗で商売を行うメリットが限られてきます。
大手企業はEC 事業へ投資を増やしており、縮小する国内市場の中でも勝ち抜こうとしています。
その中で実店舗をどう活かすかはまだ課題はありますが、EC サイトと実店舗の連携は重要な鍵となることは今後とも間違いありません。
どのようなECサイトを構築したらよいか、どのような販売戦略があるのか、EC 専門の支援業者に相談するのもおすすめです。
事業を軌道に乗せるヒントを得ることができるはずです。
関連記事
-
2024/09/30(月)
-
2024/09/30(月)
-
2024/09/26(木)
-
2024/09/24(火)
-
2024/09/13(金)