事業再構築補助金の採択率|過去の採択結果や不採択となる理由を解説
【監修者】
G1行政書士法人
代表行政書士
清田 卓也 氏
これまでIT導入補助金累計2,061件の採択実績から、申請者様から詳細をヒアリングさせていただき、またITツールの検証・効果性を元に申請をサポートさせていただいています。また、IT業界(主にWEB制作)にて10年間従事し、卸・小売・サービス業を始め幅広い業界のWEBコンサルティングを経て、現在の業務においてWEBを活用した集客を実践している事から、リアルな視点で事業計画書を作成させていただいています。
事業の再構築を図る中小・中堅企業を対象とした制度である「事業再構築補助金」は、業種・分野を問わず個人事業主も申請できる制度であり、補助金額は最大1.5億円と高額です。そんな事業再構築補助金の採択率はおおむね5割ですが、不採択につながる明確な理由が存在することをご存じでしょうか。
今回は、事業再構築補助金の採択率と共に不採択になる理由や不採択になった時の対応を解説し、業種・金額で難易度が異なる点についてもご紹介します。
事業再構築補助金の採択結果(採択件数・採択率)
事業再構築補助金の採択率は以下です。採択率は直近2年間で42~45%を推移しています。
- 2021年度:42.3%
- 2022年度:45.3%
- 2023年度:46.9%(2023年9月時点)
第1回から第10回までの採択結果は以下です。各回の公募期間・応募件数・採択件数・採択率を確認しておきましょう。
|
公募期間 |
応募件数 |
採択件数 |
採択率 |
第1回 |
令和3年3月26日~ 令和3年4月30日(*5月7日まで延長) |
22,231件 |
8,016件 |
36.0% |
第2回 |
令和3年5月20日~ 令和3年7月2日 |
20,800件 |
9,336件 |
44.8% |
第3回 |
令和3年7月30日~ 令和3年9月21日 |
20,307件 |
9,021件 |
44.4% |
第4回 |
令和3年10月28日~ 令和3年12月21日 |
19,673件 |
8,810件 |
44.7% |
第5回 |
令和4年1月20日~ 令和4年3月24日 |
21,035件 |
9,707件 |
46.1% |
第6回 |
令和4年3月28日~ 令和4年6月30日 |
15,340件 |
7,669件 |
49.9% |
第7回 |
令和4年7月1日~ 令和4年9月30日 |
15,132件 |
7,745件 |
51.1% |
第8回 |
令和4年10月3日~ 令和5年1月13日 |
12,591件 |
6,456件 |
51.2% |
第9回 |
令和5年1月16日~ 令和5年3月24日 |
9,369件 |
4,259件 |
45.4% |
第10回 |
令和5年3月30日~ 令和5年6月30日 |
10,821件 |
5,205件 |
48.1% |
また、現在(2023年9月時点)は下記のように第11回の公募がスタートしています。
【第11回の公募スケジュール】
|
日程 |
公募開始 |
令和5年(2023年)8月10日(木) |
応募締め切り |
令和5年(2023年)10月6日(金)18:00 |
採択発表 |
未定 |
【枠別】事業再構築補助金の採択率推移
事業再構築補助金にはいくつかの枠が用意されていますが、大きく「通常枠」と「特別枠」に分けられます。
「通常枠」と「特別枠」では採択率が大きく異なるため、それを理解した上で申請枠を検討すると良いでしょう。
通常枠(成長枠)
「通常枠(第10回から成長枠に変更)」は事業再構築補助金の最もスタンダードな枠であり、他の枠と比較して申請に必要な要件は緩やかな傾向にあります。通常枠の採択率の推移は、以下の通りです。
|
応募件数 |
採択件数 |
採択率 |
第1回 |
16,967件(中小企業等:16,897件、中堅企業等:71件) |
5,104件(中小企業等:5,092件、中堅企業等:12件) |
30.0% |
第2回 |
14,859件(中小企業等:14,800件、中堅企業等:59件) |
5,398件(中小企業等:5,367 件、中堅企業等:21件) |
36.3% |
第3回 |
15,423件 |
5,713件 |
37.5% |
第4回 |
15,036件 |
5,700件 |
37.9% |
第5回 |
16,185件 |
6,441件 |
39.7% |
第6回 |
11,653件 |
5,297件 |
45.4% |
第7回 |
9,292件 |
4,402件 |
47.3% |
第8回 |
7,261件 |
3,562件 |
49% |
第9回 |
5,178件 |
2,130件 |
41.1% |
第10回 |
2,734件 |
1,242件 |
45.4% |
上記の表からもわかるように、通常枠の採択率は回を重ねるごとに上昇しており、直近では45%以上の採択率となっています。
なお、応募件数・採択件数は第2回まで中小企業等・中堅企業等ごとに分けて公表されていましたが、第3回からは合計のみの公表となっています。
特別枠
「特別枠」とは、緊急事態宣言で深刻な影響を被った中小企業等を対象に、設けられた枠です。
第2回までは中小企業・中堅企業ごとに枠が分かれ、それぞれに特別枠が設けられていました。そして第3回からは「緊急事態宣言特別枠」、 第6回からは 「回復・再生応援枠」、第10回から「物価高騰対策・回復再生応援枠」と名称変更されています。特別枠の採択率の推移は以下の通りです。
|
応募件数 |
採択件数 |
採択率 |
第1回 |
5,181件(中小企業等:5,167件、中堅企業等:14件) |
2,866件(中小企業等:2,859件、中堅企業等:7件) |
53.3% |
第2回 |
5,893件(中小企業等:5,884件、中堅企業等:9 件) |
3,924件(中小企業等:3,919件、中堅企業等:5件) |
66.5% |
第3回 (緊急事態宣言特別枠) |
4,351件 |
2,901件 |
66.6% |
第4回 |
4,217件 |
2,806件 |
66.5% |
第5回 |
4,509件 |
3,006件 |
66.6% |
第6回 |
2,933件 |
1,954件 |
66.6% |
第7回 |
2,144件 |
1,338件 |
62.4% |
第8回 |
1,522件 |
879件 |
57.7% |
第9回 |
1,146件 |
590件 |
51.4% |
第10回 |
6,755件 |
3,387件 |
50.1% |
物価高騰対策・回復再生応援枠は、これまでの申請要件である「売上高減少要件」が30%でしたが、10%に緩和されました。これにより多くの中小企業が申請可能となりました。
※当社2023年10月実績
事業再構築補助金は業種・金額で難易度が違う
事業再構築補助金は枠によって採択率が大きく異なるだけでなく、業種や申請する金額によっても採択の割合が変わってきます。業種や申請する金額によって採択の難易度が変わってくるため、申請前に知っておきましょう。
業種による違い
事業再構築補助金は、様々な業種の企業に利用されています。業種ごとの採択割合のデータは以下の通りです。
【第9回公募】業種別の採択割合
業種 |
採択割合 |
製造業 |
28.7% |
宿泊業、飲食サービス業 |
13.3% |
卸売業、小売業 |
14.8% |
建設業 |
12.4% |
生活関連サービス業、娯楽業 |
5.3% |
サービス業(他に分類されないもの) |
5.5% |
学術研究、専門・技術サービス業 |
6.2% |
情報通信業 |
3.5% |
不動産業、物品賃貸業 |
3.1% |
医療、福祉 |
2.0% |
教育、学習支援業 |
1.5% |
運輸業、郵便業 |
1.7% |
その他 |
2.0% |
引用:中小企業庁「事業再構築補助金 第9回公募の結果について」
上記から「製造業」が採択割合のトップとなっており、次いで「卸売業、小売業」「宿泊業、飲食サービス業」の採択割合が高い結果となっています。
中小企業庁経営支援部長の村上敬亮氏もインタビュー(※)の中で「製造業・サービス業において、新製品・新サービスを投入した企業の割合は日本が先進国で最も低い」というOECDのデータを挙げており、製造業の事業再構築が急務であるとの旨を説明。このような背景が、製造業の採択割合の高さにつながっていることが伺えます。
また「宿泊業、飲食サービス業」「卸売業、小売業」については、新型コロナウイルス感染拡大によって休業や時短営業、外出自粛などの影響を大きく受けたことから、採択割合が高くなっていると考えられます。
※「中小企業等の思い切った事業再構築への挑戦を支援 事業再構築補助金のご案内 1.背景編~本補助制度 誕生のお話し~」【公式】事業再構築補助金事務局
金額による違い
事業再構築補助金は、補助金額が100万円から最大1.5億円と非常に大きな幅があり、採択割合も金額によって大きく異なります。金額別の採択割合の最新データは以下の通りです。
【第9回公募】金額別の採択割合
金額 |
採択割合 |
100~500万円 |
10.73% |
501~1,000万円 |
19.96% |
1,001~1,500万円 |
10.33% |
1,501~3,000万円 |
40.46% |
3,001~4,500万円 |
10.05% |
4,501~6,000万円 |
4.04% |
6,001~8,000万円 |
2.72% |
8,001~1億円 |
1.69% |
1億1~1.5億円 |
0.02% |
引用:中小企業庁「事業再構築補助金 第9回公募の結果について」
採択割合が高い金額は、上から1,501~3,000万円(40.46%)、501~1,000万円(19.96%)、100~500万円(10.73%)、となりました。
事業再構築補助金は、1,500万円までの採択金額が全体の4割以上(44.02%)を占め、また、3,000万円までの採択金額が全体の8割以上(81.48%)を占めています。
したがって、採択の確実性を高めたい場合は3,000万円までの申請を検討すると良いでしょう。
事業再構築補助金が不採択になるときの理由
事業再構築補助金は応募者の約半数が不採択となっていますが、不採択の理由は「書類の不備」「事業計画の不備」に大別できます。具体的な不採択の理由は以下の通りです。
● 申請内容に不備がある
● 事業再構築の必要性がない
● 事業計画書が公募要項に沿っていない
● 事業計画の内容が伝わらない
● 事業の実現可能性が低い
● 資金調達の目途がついていない
不採択の理由の中には事前に対策できるものも少なくありません。ここからは、それぞれの不採択理由について詳細を見ていきましょう。
申請内容に不備がある
事業再構築補助金では、必要書類を漏れなく不備のない状態で提出する必要があります。不備のある書類を提出すると審査が実施できません。
第3回までは応募件数とともに「申請要件を満たした件数」も公表されており、第1回は約3,000件、第2回は2,500件、第3回は約1,800件が申請要件を満たしていませんでした。これは応募総数の10〜15%前後に当たり、申請内容の不備が非常に多いことがわかります。
なお、形式的な不備等は事務局が差し戻ししてくれるため、修正して再申請してください。なお、差し戻しに対しては、重複申請となるため「新規申請」は行わないようにしてください。
申請内容の不備をなくすためには、必要書類をリストアップして確実に用意すること、認定支援機関にサポートしてもらうことなどを検討すると良いでしょう。
また、事業再構築補助金事務局では「交付申請にあたってご注意いただくこと」という書類も用意されているので、こちらも併せてチェックしてください。
事業再構築の必要性がない
事業再構築補助金の申請に際しては、事業再構築の必要性を明確に説明しなければなりません。
事業再構築補助金は「事業再構築への取り組み」が、大きな要件の1つです。具体的には、事業内容が「新分野展開、事業転換、業種転換、業態転換、事業再編」のいずれかに該当する必要があります。例えば、「売上減少要件を満たしており、経営が苦しい」といった説明だけでは不充分です。
特に、売上が大きく減少している場合は審査で加点される他、緊急枠なども存在しますが、事業計画書では「事業再構築の指針・方法を明確にすること」を中心に作成してください。
事業再構築の必要性がないと判断されないためには「なぜ事業再構築が必要か」を明らかにした上で「ウィズコロナなど、世の中の変化に対応する明確な事業計画」を提示しましょう。
事業計画書が公募要項に沿っていない
事業再構築補助金の事業計画書に必ず記載しなければならない内容は以下の通りです。
- 1. 補助事業の具体的取組内容(現在の事業状況、応募申請する枠、既存事業との差別化・方法・実施体制、事業再構築に伴う従業員への配慮など)
- 2. 将来の展望(事業化に向けて想定している市場及び期待される効果)
- 3. 本事業で取得する主な資産
- 4. 収益計画(事業の実施体制、スケジュール、資金調達計画等に)
また、事業計画書に決まったフォーマットは存在しませんが事業再構築補助金の募集要項には「A4サイズで計15ページ以内(補助金額1,500万円以下の場合は計10ページ以内、複数事業者の連携事業では最大20ページ)が望ましい」と記載されているため、これに沿うよう作成するのが賢明です。
さらに、申請者が中小企業等か中堅企業等かによって補助率が変わるため、事業計画書作成の際にはこの点にも注意が必要です。
実際に、事業再構築補助金の募集要項にも「中堅企業等にもかかわらず、補助率2/3の事業計画を通常枠で提出」といった不備の実例が記載されています。 また、不採択又は交付取消となるケースとして、以下のような事柄が紹介されています。
- 事業再構築の大半を他社に外注もしくは委託している
- 資産運用的な性格が強い事業である
- 公序良俗に反する
- 同じ回の公募に同じ事業者・法人が複数の申請を実施している
- そもそも申請要件を満たしていない など
公募要項に沿った事業計画書を作成するためには、事前に公募要項をよく読み込むことが重要です。
事業計画の内容が伝わらない
事業再構築補助金の審査項目は、以下の5点です。
- 1. 補助対象事業としての適格性
- 2. 事業化点
- 3. 再構築点
- 4. 政策点
- 5. 加点項目
(*グリーン成長枠の審査では「グリーン成長点」も追加)
事業再構築補助金の募集要項には、審査項目ごとに詳細なチェック項目が記載されていますが、それに対応する記載がない場合は「情報不足の事業計画書」と判断される恐れがあります。ただし、たくさんの枚数を使い、事業計画を詳細に書き込むのも得策ではありません。
事業計画書の望ましい枚数は前述のように「A4サイズで計15ページ以内(補助金額1,500万円以下の場合は計10ページ以内、複数事業者の連携事業では最大20ページ)」です。このように限られた枚数の中で、上記の審査ポイントを過不足なく要点が伝わるように記載することが重要です。
事業の実現可能性が低い
事業再構築補助金の募集要項では、事業終了後3~5年間で以下いずれかの成果が見込める事業計画を作成する必要があるとしています。
- 付加価値額の年率平均3.0%(グリーン成長枠は 5.0%)以上
- 従業員一人当たり付加価値額の年率平均3.0%(グリーン成長枠は5.0%)以上の増加
そして、実現可能性の判断材料として、審査項目の「事業化点」「再構築点」では以下のような事柄がチェックされます。
- 事業の適切な遂行が期待できる財務状況か
- 事業の適切な遂行が期待できる人材・事務処理能力等の実施体制か
- 市場の規模・ニーズ、競合他社の動向などが検証できているか
- 事業の優位性、収益性、方法、スケジュール、課題等が明確か
- 事業再構築指針に沿う取り組みか
- 事業の費用対効果は高いか
- 戦略的かつリソースの最適化を図る取り組みか
- ポストコロナ・ウィズコロナの社会変化に対応する、感染症等の危機に強い事業か
- 事業の実現可能性が低いと判断されないためには、自社の中で複数の事業計画案を出し、実現可能性をしっかりと検証した上で実際の事業計画書を作成することが望ましいでしょう。
資金調達の目途がついていない
事業再構築補助金の募集要項では、チェック項目の1つとして「金融機関等からの十分な資金の調達が見込めるか」が挙げられています。
事業再構築補助金が支払われるのは12〜14ヶ月の事業終了後です。つまり、事業は自社資金で実施する、あるいは自社で調達する必要があります。
そのため、事業実施に必要な自己資金がなく融資の目処も立っていない場合は、申請しても採択されない可能性が高いのです。
特に、申請する補助金額が大きくなるほどシビアに審査されると考えられるため、早い段階から様々な融資の手段を検討し、目処を立てることが重要です。
この他、申請枠の変更など、様々な選択肢を柔軟に検討しましょう。
※当社2023年10月実績
事業再構築補助金が不採用になったときの対応
事業再構築補助金が不採択になった場合は、次回の公募以降で再申請が可能です。再申請の際は、不採択の理由を明確に分析した上で見落としなく事業計画書や必要書類を提出してください。
なお、不採択の理由については、事業再構築補助金事務局コールセンターのナビダイヤル(0570-012-088)から問い合わせができます。
特に、事業計画書の内容に問題があった場合は、コンサルティング会社などのプロに相談するのが得策です。経験豊富なコンサルティング会社は不採択の理由を熟知しており、多角的な修正・事業計画の見直しをサポートしてくれます。速やかに事業に取り組むためにも、コンサルティング会社の利用を検討するのがベターだと言えるでしょう。
まとめ
事業再構築補助金は、給付金ではなくあくまでも「補助金」制度です。そのため審査の結果、採択されない可能性もあります。直近の採択率はおおむね50%程度ですが、枠・業種・金額によっても採択率は変わります。
なお、不採択であった場合、事業計画に何らかの問題があったケースも多いと考えられますので、事業計画の問題点を明らかにして修正した上で、次の公募にチャレンジしてください。毎回の公募で書類に不備があるケースが1,000件以上(応募総数の10%〜15%前後)もあるので、こちらにも注意してください。
事業再構築補助金は、補助金入金までのステップが多く準備書類も多いですが、要件が厳しくない枠もあります。中小企業、中堅企業、そして個人事業主までカバーされますので、ぜひ事業再構築補助金を活用して将来につながる事業をスタートさせてみてはいかがでしょうか。
※当社2023年10月実績
関連記事
-
2024/09/13(金)
-
2024/08/26(月)
-
2024/08/23(金)
-
2024/08/22(木)
-
2024/08/22(木)