パートナーシップ構築宣言をわかりやすく解説!メリット・デメリットとは
補助金の公募要領に「パートナーシップ構築宣言」という単語をご覧になった方もいるのではないでしょうか。どのような制度なのかピンとこないという方も少なくありません。今回は「パートナーシップ構築宣言」の目的や登録するメリット、登録したことで役立つシーンなどを紹介します。登録を検討している方はぜひ参考にしてください。
パートナーシップ構築宣言とは?
パートナーシップ構築宣言とは、大企業と中小企業の共存共栄を目指し、「良好な取引関係を築くことに協力的な事業者である」ことを宣言する制度で、2020年から始まりました。
大企業と中小企業の関係はこれまで、「下請け」「孫請け」などといった言葉で表現されていて、経済に変動があった場合、中小企業にしわ寄せが来ることも少なくありませんでした。このような関係性を解消し、共存共栄を目指すことを公に宣言するのが「パートナーシップ構築宣言」です。
パートナーシップ構築宣言の目的
パートナーシップ構築宣言は、立場の弱い中小企業が不利益を被ることなく、取引先と良好な関係を築くことを目的としています。発注先である大企業などに、下請け企業と不利益な取引を避けることを宣言させることで、中小企業を守る狙いがあります。
パートナーシップ構築宣言が重点的に取り組む内容は、以下の2点です。
- サプライチェーンの共存共栄と新たな連携、振興基準の遵守
- 望ましい取引慣行の遵守と取引先とのパートナーシップの強化
パートナーシップ構築宣言の対象
パートナーシップ構築宣言の対象となるのは、規模の大小にかかわらず発注企業側です。仕事を発注する側の企業がパートナーシップ構築宣言を行うことで、下請け企業と宣言の内容に沿った取引をしていきます。
受注側である中小企業・個人事業主は、パートナーシップ構築宣言をする必要はありません。
宣言の公表を行っている企業も多数ある
パートナーシップ構築宣言に登録している企業は、2023年4月時点で24,175社となっています。内閣府や中小企業庁などが共同運営する「パートナーシップ構築宣言」ポータルサイトでは、登録企業を業種や地域ごとに確認できます。
パートナーシップ構築宣言のメリット
パートナーシップ構築宣言を行うと、公式ポータルサイトに企業名が掲載されるだけでなく、さまざまなメリットを享受できます。メリットは以下の通り。
- 企業の取り組みを周知でき、ロゴマークが使用できる
- 加点措置が受けられる補助金がある
- SDGsを達成することにもつながる
- 下請けの企業と信頼関係が築ける
それぞれ内容を詳しく見ていきましょう。
企業の取り組みを周知できる
パートナーシップ構築宣言を行い、公式ポータルサイトに企業名が登録されると、企業の取り組みを周知でき、取引先や消費者などに良い印象を持ってもらえます。下請け企業との対等な関係を重んじる「ホワイトな企業」であることをアピールできるため、新規採用などでもイメージアップを図れます。
登録されると、ロゴマークを使用できるため、公式サイトや名刺、パンフレットなどにマークを入れることで営業戦略にも役立ちます。
加点措置が受けられる補助金もある
国が実施する補助金制度の中には、パートナーシップ構築宣言を行うことで加点措置を受けられる制度があります。2023年5月時点で、加点措置が受けられる補助金は以下の通りです。
- 事業再構築補助金
- ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
- コンテンツ海外展開促進・基盤強化事業費補助金
- 自立・帰還支援雇用創出企業立地補助金
- 住宅・建築物需給一体型等省エネルギー投資促進事業費
- 省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金
また、各地方自治体独自の補助金でも加算措置が受けられます。詳細はポータルサイトのリンクをご確認下さい。
SDGSを達成することにもつながる
パートナーシップ構築宣言を行うことで、SDGsの5つの目標の達成にもつながります。SDGsの目標を達成することは、企業のイメージアップにつながるだけでなく、古い企業体質を改善するきっかけにもなります。達成できる目標は以下の通りです。
- 目標3:すべての人に健康と福祉を
- 目標8:働きがいも経済成長も
- 目標9:産業と技術革新の基盤をつくろう
- 目標10:人や国の不平等をなくそう
- 目標17:パートナーシップで目標を達成しよう
下請けの企業と信頼関係が築ける
パートナーシップ構築宣言を行った発注先の企業は、宣言に沿った取引をしなければなりません。宣言は企業のトップ自らが名前で署名するため、自分を律するような力が働きます。その結果、下請け企業は安心して取引できるようになり、深い信頼関係を築けるようになります。
パートナーシップ構築宣言にデメリットがない?
パートナーシップ構築宣言を行うとメリットはたくさんあるものの、デメリットはほとんどないとされています。ただ、取引先に取り組みを理解してもらえないことがあることと、2022年に改正された下請中小振興法に基づく「振興基準」を守る必要があることなどがデメリットとして挙げられます。
宣言に違反したとしても、公的機関の強制的な調査や違反時の罰則はありません。
今後パートナーシップ構築宣言はどうなる?
パートナーシップ構築宣言の取り組みは始まったばかりですが、たった3年で登録した企業は24,000社を超えました。今後も登録する企業の増加が見込まれることから、さまざまな効果が期待されています。
補助金の優遇が充実していく可能性がある
2023年5月時点では、加算などの優遇措置が受けられる補助金は限定的ですが、パートナーシップ構築宣言が広まりをみせ、成熟していく中で、宣言を行った企業が有利に働く補助金の範囲がますます増えていくことが見込まれます。
優遇措置を受けると補助金が支給されやすくなります。補助金の優遇措置目当てにパートナーシップ構築宣言に登録する企業が増え、登録した企業がさらに増えることで、優遇を受けられる補助金の範囲が拡大し、社会的認知度も広まっていくといった、相乗効果が生まれてくることが考えられます。
さらに、パートナーシップ構築宣言には目立ったデメリットがなく、登録料も不要です。
下請けGメンの増員によるサイクル強化を実施
パートナーシップ構築宣言が普及することで、下請けGメン増員による監視体制のサイクルが強化され、対等な関係が深まります。
下請けGメンとは発注先企業と下請け企業の間で、買いたたきなどの理不尽な取引が行われていないかを聞き取り調査する専門調査官です。2022年には、従来の約2倍に増員され、2023年5月時点で248人が活躍していますが、今後人員がさらに増えることが予定されています。
下請けGメンからのヒアリング結果をベースに、各業種の課題や改善点を把握することで、自主行動の改定などが進み、共存共栄を図る動きがますます加速化し、発注企業と下請け企業が対等な関係になっていくことが期待できます。
パートナーシップ構築宣言の登録手順
パートナーシップ構築宣言を希望する企業は、公式ポータルサイトで登録する必要があります。難しい手続きではないため、外注する必要はなく、自社で登録できます。以下の手順で手続きしてみてください。
- ひな形をダウンロードしてPDFの作成を行う
- 登録ページでPDFのアップロードを行う
- パートナーシップ構築宣言を公開する
手順①ひな形をダウンロードしてPDFの作成を行う
「パートナーシップ構築宣言」ポータルサイトから宣言書のひな形をダウンロードします。宣言書は、ダウンロードしたひな形を活用することで簡単に作成でき、必須項目などを漏らさずに記載します。
パートナーシップ構築宣言の内容には、必須項目と任意項目、定型部分と個別記載部分があります。任意項目や個別記載部分では、自社の事業・取引内容に当てはまる項目を選び、加筆・修正します。最後に、会社名と代表者名を明記して完成となります。
ひな形は随時更新されます。作成したまま長い間提出しないでいると、最新データでなくなっていることもあります。詳しい記載の仕方は記載要領に書かれているため、ダウンロードして目を通してください。
手順②登録ページでPDFのアップロードを行う
作成した宣言書は、PDFでアップロードします。アップロードは、ひな形などをダウンロードしたポータルサイトの同じページにある「登録」ボタンから可能です。
企業名や法人番号などの企業情報を入力し、指示に従ってファイルをアップロードしてください。
手順③パートナーシップ構築宣言を公開する
パートナーシップ構築宣言の宣言書をアップロードした後、書類内容に不備がなければ、ポータルサイトに公開されます。公開された後、ロゴマークが使えるようになります。
パートナーシップ構築宣言を活用するポイント
パートナーシップ構築宣言は、登録して終わりではありません。登録後、取り組みが適正か否か判断されるため、宣言内容に従って継続的な行動をとることが求められています。活用するポイントとして以下の2点を意識してください。
宣言の目的とメリットを把握する
パートナーシップ構築宣言は、立場の弱い下請け企業を守り、適正な取引が行われるようにするための取り組みです。宣言の目的やメリットを把握し、自社に必要なものなのか、宣言したことによる会社の方向性などを明確にします。
取り組み内容を社内に共有して業務改善を行う
パートナーシップ構築宣言の取り組み内容を最大化するため、取り組み内容を社内で共有し、宣言に基づいた取引が行われるように業務改善を行うのが2つ目のポイントです。
社内広報や従業員教育を通じて情報を共有し、宣言に基づいた業務改善を行うなど、よりよい関係を構築するために努力することが大切です。
パートナーシップ構築宣言が役立つ5つのシーン
パートナーシップ構築宣言を行うと、自社の企業価値が向上し、ブランドイメージが高まるだけでなく、従業員などの意識も変わります。宣言を行うことで、役立つ5つのシーンを紹介します。企業を取り巻くさまざまな人に宣言したことを伝えることで、より効果が高まります。
広報活動
パートナーシップ構築宣言は広報活動を通じて取引先や下請け企業、求職者、消費者などのステークホルダーに宣言内容を広く認識させ、ファンづくりに役立ちます。
宣言したことで、取引先や下請け企業と適正取引を行うホワイト企業であることを公に発表したことになり、広報活動を積極的に行うことで、宣言の決まりとなっている「下請け会社に不利益のない取引を守ることを見える化」したことにつながります。
自社の公式サイトに宣言のロゴマークを掲載すると、対外的な印象も良くなります。
取引先との関係構築
宣言したことを取引先に伝えることは、取引先との関係構築にも役立ちます。パートナーシップ構築宣言の目的は、取引先・下請け企業と円満な関係を築くことにあります。
宣言に合った行動を実施していることを取引先に伝えることで、親密な信頼関係を築くことができ、優秀な下請け企業と長期的かつ安定した取引を実現できます。
宣言のロゴマークを名刺やチラシなどに印刷することで、営業担当が企業の姿勢を発信でき、取引先との会話にも、ロゴマークについて触れるきっかけになります。
企業体質の改善
パートナーシップ構築宣言することは、自社のこれまでの活動を振り返り企業体質の改善にも役立ちます。過剰な品質要求や短納期をしていないか、対等なコミュニケーションが維持できているか、時間を無視した商談設定など、身勝手な行動はしていないかなど、共存共栄の関係構築の実現に向けて、古い慣習や長年のルールを見直すことにつながり、社会的にクリーンな企業を目指すことが可能になります。
企業の信頼性や社会的責任の向上
パートナーシップ構築宣言を行と、取引先や下請け企業と共存共栄の関係を構築する意志があるホワイト企業として認識されるため、企業の信頼性や社会的責任の向上に役立ちます。
宣言に基づいて本業に沿ったSDGs施策やCSRを作り上げていくと、さらにイメージが良くなり、社会的にも貢献している会社であることを伝えることができます。
企業イメージの強化
従業員や外部の利害関係者が、パートナーシップ構築宣言に登録された企業名や、宣言のロゴマークを目にすることで、社会的責任のある取り組みを行っていることが再認識され、企業のブランディング強化に役立ちます。
ホワイト企業であることが公になると、新規採用や消費者の購買行動にも良い影響を及ぼすことになります。
まとめ
パートナーシップ構築宣言とは、取引先や下請け企業との共存共栄関係を築くため、企業規模の大小にかかわらず、発注側が自社の取引方針を宣言する取り組みです。登録するとポータルサイトに企業名が公表され、ロゴマークが使えるようになり、取引先との対等な関係構築を積極的に行っているホワイト企業であることを公的に示すことができます。社会的信頼性が高まるなど、さまざまなメリットを享受できるパートナーシップ構築宣言に登録してみてはいかがでしょうか。
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