アップセル・クロスセルの違いと効果|成功事例と導入時のポイントを解説します!

category :  EC売上UP

update :  2023/03/08(水)

staff :  nakahara

売上を伸ばす方法は、新規顧客を獲得するだけではありません。既存顧客への価値の高い商品を紹介することや、一緒に購入すると便利な別の商品の紹介をして売上を伸ばすことも重要です。

新規顧客の獲得が頭打ちで売上が伸びないと悩んでいる方は、クロスセルとアップセルについての知識を持つことで状況を打開できるかもしれません。この記事では、用語について解説し、成功のポイントや事例も交えて解説します。

アップセル・クロスセルとは

アップセル・クロスセルとはどちらもマーケティング施策の1つで、1人あたりの客単価を上げる目的として使われる手段のことです。

消費者1人1人が1回の買い物で購入する金額のことを顧客単価といい、顧客単価を上げることで相乗的に売上も利益もアップします。

新規顧客を増やし、母数を増やす方が企業として成長しやすいため理想ではありますが、どこの業界も飽和状態になっているため、新規顧客を獲得することは難しい状況です。

そこで既存顧客との関係性構築などに着目した手法である「アップセル・クロスセル」が注目されています。

アップセルとは

アップセルとは、顧客が本来購入しようとしていた商品よりもう一段グレードアップさせた商品の購入へつなげる手法のことです。

例えば、iphoneの購入を目的として来店した顧客に対し、本来購入を予定していた10万円のiphoneとは違う、もう一段階上の15万円のiphoneの高性能機能をアピールし、高い方のiphoneが購入された場合にアップセル成功となります。

アップセルの具体的な施策例は以下のとおりです。

【アップセルの施策例】

  • ハイスペック品や上位モデルの提案
  • 無料期間を設けて有料プランへ誘導
  • 期間限定仕様などの付加価値の提供
  • キャンペーンでお得感を出して提案
  • よい口コミを紹介して誘導

サブスクなどでもよくある、1ヵ月のお試し期間などもアップセルに使われる方法の1つです。施策例を挙げてみると、日常で普段からアップセルの手法に触れてきているのが分かるのではないでしょうか。

上記のように無料から有料へすることや、スペックや付加価値が高い上位レベルのものを提案し、顧客単価の向上を目指す手法がアップセルです。

クロスセルとは

クロスセルとは、ターゲットが購入を検討している商品に加えて、もう1点、2点などを加え、複数の商品購入を促す手法になります。

例えば、スーパーの野菜売り場でジャガイモやニンジンの近くにカレーのルーを置いていたり、白菜の横にお鍋のスープ素を置いていることもクロスセルの手法の1つです。

【クロスセルの施策例】

  • より便利になる関連商品の提案
  • 条件付きで特典や割引を提供
  • 補助となるものをオプションとして紹介
  • セットで購入することで大きな効果を発揮すると提案

条件付きで特典や割引を提供するクロスセルは、考えてみると意外と身近に感じる方が多いかもしれません。〇円以上で送料無料、などもクロスセルの代表的な手法です。

1つの商品から別の商品へ変えて購入をすすめるアップセルに対して、顧客が購入・検討中の商品に対し、関連した製品を紹介し、追加購入を成功することで顧客1人あたりの単価を上げる手法をクロスセルといいます。

アップセル・クロスセルがもたらす効果

アップセル・クロスセルがもたらす効果

アップセル・クロスセルをすることによってもたらす効果は売上向上のみではありません。ほかにも複数の効果が期待できます。

【アップセル・クロスセルの効果】

  • 売上が向上する
  • 顧客の満足度が向上する
  • ファンを増やすことにつながる
  • 営業効率が向上する

それぞれ詳しく解説していきます。

売上が向上する

アップセル、クロスセルのもたらす効果として、まず期待できることは全体の売上金額が上がることといえます。

売上の仕組みは、客数×客単価であることは客商売の基本です。客単価が増えることにより、同じ売上客数の場合にも売上は上がることが予想できます。

そのため、単価の高い方の商品を購入、もしくは別商品とセットで購入されることにより、総合的な売上のアップにつなげることが可能です。

顧客の満足度が向上する

販売している商品やサービスに対して、購入者がどれほど満足を得ているのかを表す指標が顧客満足度です。顧客満足度が増すことでリピーターとなり、結果的にさらなる売上獲得につながります。

アップセルやクロスセルを狙うには、顧客対応を手厚くしたり、商品を複数購入できるようにラインナップを揃えたりといった工夫が必要です。販売者側が工夫を凝らした対応をすることにより、顧客にとってもプラスとなる体験をする機会が増えます。

顧客としては「こんなよい商品も買えた」、「親切な対応をしてくれた」という感想になるでしょう。結果として、顧客満足度も向上することが期待できます。

ファンを増やすことにつながる

マーケティングにおけるファンとは、ある一定の企業の製品にこだわり、ファンになった企業やブランドの商品ばかりを購入し続ける消費者のことです。

身近で分かりやすい例えはブランドもの商品です。全身同じブランドのコーディネートをする方や、お気に入りのブランドの商品しか購入しない方はファンになっている状態といえます。

アップセル・クロスセルによって、購入した商品を気に入った場合や、購入者にとっても利便性が上がるような体験をすることにより、次の期待値も上がることでリピーターとして訪れてくれるようになります。

営業効率が向上する

新規顧客に商品を購入を促す場合、購買意欲が全くない状態から営業してアピールしなければなりません。購買欲が高まりきらないことも多いため、結局購入してくれなかったということもよく起こります。

新規顧客と比較すると、すでに自社の製品を購入している顧客は、お店に来る時点で期待値が高まっており、購買意欲がかなり高い状態です。さらに、自社の製品を気に入っていることも多く、商品アピールも届きやすいため、成功率が上がります。

アップセル・クロスセル成功のポイント

アップセル・クロスセルはやり方を一歩間違えると、顧客の気持ちを分かっていない、商品の押し売りなどと言いった悪評を受けることも考えられます。

そこでアップセル・クロスセルを成功させるポイントを紹介していきます。

【アップセル・クロスセル成功のポイント】

  • 情報収集をしっかり行う
  • 顧客視点に立って分析する
  • 仮説検証を行う
  • 適切なタイミングで提案する
  • 顧客に対するベネフィットを具体的に提示する

情報収集をしっかり行うこと

顧客に対してはもちろん、商品についての情報収集も行っておきましょう。

例えば、以下のような情報を集めておくと、分析に役立ちます。

  • 顧客の年齢層
  • 購入しようと至った経緯
  • 既存顧客が購入した商品
  • 購入した商品についての感想や意見
  • 購入している商品の中心価格帯

ECサイトやメディアを運営している場合、アクセス状況やコンバージョン履歴なども参考として役立ちます。

また、身近な友人・知人などから商品についての意見を求めることも有効な手段です。顧客から本音を引き出すことは難しいですが、距離感が近いこともあり、率直な意見も聞きやすいでしょう。

顧客視点に立って分析すること

自社都合で1円でも高いものを売るというスタンスではなく、顧客のニーズを最優先し、本当に顧客の意向に沿えると考えられる商品だけをおすすめすることは、商売において重要です。

企業側の都合のみを押し付けるような営業を行っていると、徐々に顧客の心が離れていき、会社の利益を大きく損なう恐れがあります。

集めた情報を元に、常に顧客視点に立って商品について考えていきましょう。

仮説検証を行う

分析した情報を元に、仮設の検証を行います。検証結果によっては売上が下がってしまったり、客数が減少したりすることもあるかもしれません。

しかし、そのような失敗した検証についても顧客を分析するためのデータの1つとして役立てられます。そのため、必ず検証した結果は分析までするようにすることが大切です。

情報収集から仮説検証までの工程を繰り返していくうちに、失敗よりも成功する確率が一段と引き上がるでしょう。

適切なタイミングで提案する

アップセルまたはクロスセルを行うタイミングを間違うと、ネガティブな印象を与えかねません。2つの手法は似ているようですが、適切なタイミングは異なるため間違わないようにしましょう。

【提案に向いているタイミング】

  • アップセル:顧客の購入の意思が固まったタイミング
  • クロスセル:購入を決めた直後

アップセルの場合は購入の意思が固まるのを待ちましょう。商品を購入することは決まっている状態で上のグレードの商品を紹介すると、対象の商品についての情報を自然に伝えられます。

クロスセルの場合は購入を決めた直後です。購入する商品に合わせた提案が必要となるため、商品の購入が確定したあとのほうがタイミングとしては適切となります。

顧客にとってのベネフィットを具体的に提示する

顧客がアップセルやクロスセルについてあまりよい印象を持っていない場合もあります。だからこそ、押し付けではなく顧客にとってメリットがあるために提案したことを示すことで、成功率を上げることが可能です。

顧客が購入する際の最終的な購買理由は「自分にとって役に立つと感じた」点であることを忘れてはいけません。具体的に示すためには、日常生活で使用する場面を例に挙げ、どのように役立つか、不便な状況を変えられるかなどを伝えるとよいでしょう。

ベネフィットを示しておくことで、失敗した場合にも業側の押し付け感を感じづらく、むしろよい印象を与えることにもつながります。

アップセルの2つの成功事例

次にアップセルの手法を使って成功した2社の成功事例を紹介していきます。実際に成功した事例を知ることで、具体的なイメージが湧きやすく、実践でも活かしやすくなるでしょう。

アップセル成功事例1:Spotify

音楽ストリーミングサービスを提供している「Spotify」では、1時間の間に無料で6曲スキップできるのですが、7曲目からスキップしようとすると有料のプレミアムサービスの案内が表示されます。

Spotifyが画期的なところは、「課金しないとこれ以上はできません」というネガティブな表現ではなく、7曲目以上もスキップできるプレミアムサービスを見つけましたというポジティブな表現で、上手にアップセルへ誘導している点です。

アップセル成功事例2:Dropbox

オンラインストレージサービスの「Dropbox」も、無料版から有料のプレミアム版へアップグレードさせるアップセルに成功した会社です。

アップセル・クロスセルでは顧客にとって過多になりすぎず、適度な距離感でアピールすることが大切と考えられます。

「Dropbox」では、アップグレードに関するリマインダーを画面右下に常に表示させられるように設置していますが、いつでも削除が可能な仕様です。

それとは別に右上に小さく、もう1つアップグレードをさりげなくアピールする表示をさせておくことで、ユーザーにアピールすることに成功しています。

クロスセルの2つの成功事例

クロスセルの2つの成功事例

次にクロスセルの成功事例を紹介します。クロスセルでは、日本でも有名な2つの企業を紹介していきます。

クロスセル成功事例1:Uber eats

フードデリバリーを展開する「Uber eats」は、購入したい商品を選択して、購入画面へ移行する際に一度サイドメニューを表示させるクロスセル手法で確実に売上を伸ばしています。

商品単価としてはそこまで高くないものを合わせて訴求されることで、「この程度の金額なら購入してもいい」と思考することを利用したクロスセル手法です。

「Uber eats」ではほかにも、購入地点の近くにある店舗商品を「〇分以内であれば無料で追加可能」とし、デザートなどの別店舗の死商品を合わせておすすめする手法なども行っています。

クロスセル成功事例2:マクドナルド

ファーストフードの大手「マクドナルド」で有名な「ご一緒にポテトはいかがですか?」のスタッフによる訴求もクロスセルの手法です。押し付けにならないうえ、高い商品でもないですので、ついつい追加で購入してしまうことも多いのではないでしょうか。

さらに、マクドナルドでは、「+50円でLサイズにもできますが」というようなアップセルの手法も有効活用しています。

まとめ

今回はアップセルとクロスセルについて詳しく解説してきました。

アップセルとは購入を検討している商品より上の性能である代わりに高額となる商品の購入を促し、クロスセルとは購入商品に関連する商品を紹介して売上を伸ばす手法です。どちらとも間違った使い方をすると、顧客に悪い印象を与えてしまいますので注意してください。

実際に有名企業でも取り入れて、成功している前例もあります。新規顧客が伸びずに売上が低迷している企業などは、この記事を参考にしてアップセル・クロスセルの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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